2012年7月〜2013年6月 掲載
2012年
6月
30日
土
平成24年7月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第1回
今月からしばらく健康情報のウソ・ホントをお休みし、TPP (Trans-Pacific Partnership)(環太平洋経済連携協定)について述べます。
野田首相は約2カ月前の4月30日に、オバマ米大統領とホワイトハウスで、民主党の首相として初の公式日米首脳会談を行い、共同声明を発表しました。
その骨子(こっし)の1つとして、「TPPについては、引き続き日米二国間の協議を前進させる」という事項があります。
野田首相は正式なTPP参加表明については見送ったものの、依然として参加意欲が旺盛である事を対外的に示した訳です。
この僅(わず)か2週間足らず前の4月18日には、「国民医療推進協議会」が「TPP参加反対総決起大会」を開催し、「日本のTPP参加に反対する」という決議を発表していました。
この「国民医療推進協議会」は、日本医師会を筆頭に計40の医療関係団体で組織されており、昨年11月以降、政府に対してTPP交渉対象に公的医療保険制度を含めないよう、再三再四、要請してきました。けれども、政府が明確に返答しなかったため、ついに、さらに踏み込んでTPPへの参加自体に異議を唱(とな)える決議をしたのです。
野田首相はこれを無視して、オバマ大統領との共同声明を発表したのですから、政府と「国民医療推進協議会」はTPP参加の是非を巡って、今後激しく対立して行くでしょう。
ここに、4月18日における「国民医療推進協議会」の決議文を掲載します。
「TPPに参加すれば、我が国の医療が営利産業化する。
その結果、受けられる医療に格差が生じる社会となることは明らかである。
よって、我が国の優れた国民皆保険の恒久的堅持を誓い、その崩壊へと導くTPP交渉参加に断固反対する。以上、決議する。」
短い決議文ですが、強い反対意志が表されています。
そもそも、TPPとは一体どんなものでしょうか?
医療の営利産業化とは何でしょうか?
なぜ、TPPに参加すれば医療が営利産業化するのでしょうか?
そして、国民皆保険が崩壊するというのはどういう事でしょうか?
私なりに勉強した事を、次回以降、できるだけ分かり易く解説しようと思います。
次号に続く
2012年
7月
31日
火
平成24年8月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第2回
そもそも、TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)(環太平洋経済連携協定)とは、一体どんなものなのでしょうか?
TPPはもともと、2006年にシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリという4つの小国の間で締結された経済連携協定(Pacific 4、通称P4)に過ぎませんでした。
そこに、2010年3月にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの4カ国が、さらに10月にはマレーシアが加わって計9カ国となりました。
この9カ国で2015年までに広域経済連携協定を締結する事を目指しています。
このように書くと、自然な成り行きのように見えますが、実際はそうではありません。アメリカが途中から加わったのには理由があるのです。
TPP9カ国のGDP(国内総生産)の合計に占めるアメリカ1国の割合は87%にも及び、他の8カ国の合計13%を遙かに凌駕(りょうが)しています。事実上、アメリカが後から出てきてTPPを乗っ取ってしまった訳です。とは言え、大国アメリカが小国8カ国を相手に自由貿易をしても、あまり旨みはありません。2009年にオバマ大統領がTPPへの参加を表明した当初、「ウオールストリート・ジャーナル」などの米国内メディアから「なぜアメリカがTPPに参加する必要があるのか?」と批判されていましたが、もっともな疑問です。
しかし、ここに日本が加われば、話は別です。もし、TPPに日本が加わって10カ国になれば、GDPで見ると日米2カ国が実に91%を占めます(日本24%、米国67%)。
TPPは事実上、日米の2国間協定となるのです。アメリカの参加は、最初から日本の参加を前提にしていたのです。アメリカは、日本を引きずり込んでアメリカの「草刈り場」にする算段で、TPPを乗っ取ったのです。
アメリカがこのように露骨に日本を巻き込んでまでTPPを乗っ取ったのには、2008年のリーマンショック以降の大不況という背景があります。
オバマ政権におけるTPPとは、大不況を克服するための一手段です。
すなわち、「関税・非関税障壁を撤廃する事によって、2009年から2014年までの5年間で輸出を倍増し、アメリカの経済成長と雇用創出を成し遂げる。そのための道具としてTPPを利用しよう」というのが、オバマ政権の戦略なのです。
「普天間基地を最低でも沖縄県外に移設する」などと出来もしない約束をした挙げ句、辺野古以外の代替地が見つからずに右往左往して日米関係にミソを付けてしまった民主党政権は、これ以上アメリカのご機嫌を損ねる訳にはいかないのです。
だから、日本国内でTPP参加の是非が世論を二分しているにも拘(かか)わらず、オバマ大統領に尻尾(しっぽ)を振って付いて行こうとしているのです。誠に情けない限りです。
次号に続く
2012年
8月
31日
金
平成24年9月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第3回
アメリカに関税ゼロで輸出できるようになるのですから、日本の輸出企業はTPP参加を大歓迎です。輸出企業を多く抱える経団連(日本経済団体連合会)からの政治献金は民主党政権にとって大きな資金源です。
都市部のマスコミも輸出企業からの広告費が無くなると困ります。
従って、新聞はこぞってTPP推進論を社説に書き立て、テレビはこぞってTPP推進論者を登場させ、共にTPP参加賛成の世論作りに励んでいます。
マスコミはカネのために国民を洗脳し、アメリカの飼い犬に成り下がった政府はカネのためにアメリカに盲従するという構図が完成してしまった訳です。
昨年3月、野田首相は都内の講演会で「TPPはビートルズです。日本がポール・マッカートニーでアメリカがジョン・レノンです。ポールのいないビートルズはあり得ない。この二人がきちっとハーモニーしなければならない」と述べました。
この例え話は、私が説明するまでもなく、ビートルズの曲の90%以上を作曲したポール・マッカートニーとジョン・レノンに、日米関係を準(なぞら)えたものです。
オバマ大統領の飼い犬ポチが、ご主人に尻尾を振りながら、「ご主人がジョン・レノンで、私はポール・マッカートニーです。」と言っている訳です。
オバマは、この話を聞いて、きっと失笑した事でしょう。ポール・マッカートニーとジョン・レノンの音楽的才能は同等と思う私に言わせれば、野田は笑止千万(しょうしせんばん)の思い上がりをしていますし、日本に例えられたポール・マッカートニーに対して失礼です。
私は、ビートルズの他のメンバーであるジョージ・ハリソンとリンゴ・スターも好きですが、この二人を抜きにしてビートルズを語った野田首相の例え話は、この二人に対しても失礼です。
さらに、日米以外のTPP参加国(8カ国)はどんな思いでこの話を聞いた事でしょう?
オバマの飼い犬ポチが、他の8カ国に向かって、「私とご主人様はビートルズのポール・マッカートニーとジョン・レノンだぜ。あんた達8人が寄ってたかっても、ジョージ・ハリソンとリンゴ・スターの二人分程度の力しかないんだよ」と言い放った訳です。
穴があったら入りたい心境です。野田首相に代わって私が、ジョージ・ハリソンとリンゴ・スターと8カ国に、お詫び申し上げます。
冗談はさておき、野田首相がTPPをアメリカとの関係だけで考えている事が、よく分かりました。さらに、2010年10月には、米国通商代表部(USTR, Office of the United States Trade Representative)の高官が「TPP交渉はアメリカが主導している」と放言しました。
TPPを舞台に日本を草狩り場にしようと企(たくら)むアメリカと、日米関係を相思相愛の関係と勝手(かって)に思いこんでいる飼い犬ポチ。
思惑が異なる、同床異夢(どうしょういむ)の日米2カ国が、良くも悪くもTPPの中核を成す事は間違いありません。
音楽界だけではなく、文化・思想の面でも世界中に旋風を巻き起こしたビートルズでしたが、結成後たった8年で解散してしまいました。
さて、TPPの運命や如何(いか)に?
次号に続く
2012年
9月
30日
日
平成24年10月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第4回
既に述べたように、TPPとは環太平洋経済連携協定の略称です。
環太平洋とは太平洋周辺諸国という意味ですが、残念ながら、日米同様に「太平洋周辺」に位置する中国、韓国、ロシア等の諸国は参加していません。環太平洋とは名ばかりです。TPPの実体は、アメリカが日本を狙い撃ちにした日米間の貿易協定なのです。
TPPは参加国間における「例外無き関税撤廃」と「非関税障壁撤廃」を原則としています。「非関税障壁」とは、関税以外の、貿易の障害となる、あらゆる規制やルールの事です。その国特有の社会制度や取引慣行なども含まれます。現在は21分野が協議されていますが、「生きた協定」と言われ、結ばれた協定内容や対象分野の拡大などが定期的に再検討されます。自由化例外品目を提示しての参加は認められていません。要するに、経済の国境を完全撤廃し、人・物・カネ・サービスなどを自由に行き来させようというのです。例外を認めないのですから、主に二国間で締結されるFTA(Free Trade Agreement、自由貿易協定)やEPA(Economic Partnership Agreement、経済連携協定) の枠組みを遙かに超えています。
アメリカ政府は、1990年代以降、日本医療の市場開放を求めてきました。
振り返ってみましょう。
小泉政権時代
・2001年「年次改革要望書」で、病院や看護施設への民間企業参入を求め てきました。
・2004年「日米投資イニシャティブ報告書」で、混合診療全面解禁や医療への株式会社参入を求めてきました。混合診療については次号以降で説明します。
民主党政権時代(オバマ政権誕生後)
・2010年(鳩山内閣時代)、「外国貿易障壁報告書」で日本医療市場を外国企業に開放し、営利企業や営利目的の病院が参入できるよう要求してきました。
・2011年2月(菅内閣時代)、「日米経済調和対話」で以下の要求をしてきました。
① 新薬創出加算を恒久化し、加算率の上限を撤廃せよ(日本では2年ごとに薬価改 定があり、いくら新薬を開発しても2年ごとに値下げされるが、これをやめて、製薬会社が希望する高値(たかね)に据え置け)。
② 市場拡大再算定ルール(新薬が当初の予測以上に売れた場合はその薬価を引き下げる)を廃止せよ。
・2011年9月(野田内閣時代)、「医薬品へのアクセス拡大のためのTPP貿易目標」で薬価決定の際の透明性の確保(薬価決定の際には製薬会社の意見も聞け)などを要求してきました。
このように、オバマ政権誕生以来、アメリカの日本医療に対する圧力が強まっています。TPPが事実上、アメリカが日本を標的とした協定であり、しかもオバマ政権のTPPに込めた狙いが米国企業の輸出拡大と雇用創出である事を考えると、日本がTPPに参加すれば、アメリカの日本医療に対する要求がさらに強くなる事は確実と覚悟するべきです。
次号へ続く
2012年
10月
31日
水
平成24年11月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第5回
前号で述べたように、アメリカは日本の公的医療保険制度に対して、
様々な内政干渉とも言える要求を行ってきました。
アメリカの日本医療市場開放要求に呼応して、日本政府も公的医療保険の営利産業化(医療への民間企業参入や営利目的の外国人患者勧誘)を徐々に進めてきました。
・2011 年1月、民主党政権は医療機関における治療だけでなく、人間ドック・健康診断から温泉湯治などの療養に至るまで、幅広い分野を対象とした「医療滞在ビザ」を創設しました。いわゆる「医療ツーリズム」の解禁です。
・同年4月、民主党政権は医療法人の役員を兼務できる営利企業役員の範囲を拡大すると閣議決定しました(現在の医療法では、医療法人の役員と他の法人の役員の兼務は制限されています)。
・同年6月、営利企業が特別養護老人ホームを設置できるように、法改正が行われました。
・同年7月、民主党政権は公的医療保険の給付範囲を縮小する(保険で行える医療を制限する)事を提言しました。また、国際医療交流を推進し、外国人患者や外国人医療従事者(医師や看護師)を積極的に受け入れる方針を示しました。
政府は昨年10月まで、「公的医療保険制度はTPPの議論になっていない模様」としてきました。野田首相も昨年11月11日に「国民皆保険は守る」と述べていました。
けれども、その後の発言からは国民皆保険を堅持するという強い姿勢はうかがえません。
事実、昨年11月15日の参議院予算委員会で「TPP参加によって公的保険制度が根本から変えられる事もあるかも知れない」と述べています。
政府は、「TPPは多国間交渉であり、アメリカの要求がそのまま通る訳ではない」と楽観的に構えています。しかしながら、オバマ大統領は今月に行われる大統領選挙において、高い失業率というマイナス材料を抱えて再選が危ぶまれており、焦燥感を募らせています。TTPに関しても日本に対する要求のトーンを強めてくるのは必至です。
日本がアメリカと共に経済統合の枠組み作りを主張する事など出来ません。
TPP交渉を主導するのは間違いなく最大の大国アメリカです。
今の日本は、アメリカに妥協せずに主張を押し通せるような立場にはないのです。
日本の対米従属はいつもの事ですが、最近、その傾向はより顕著です。
尖閣諸島・竹島・北方領土などの領土問題が深刻化しているからです。
日本は普天間基地移設問題でアメリカに借りを作った上に、領土問題ではアメリカに助けてもらわなくてはならない立場にいます。
オバマ大統領の飼い犬ポチに成り下がった野田首相は、日本のTPP参加を契機にこれまで以上に次々と繰り出されるアメリカの要求を無条件に飲まざるを得ないでしょう。
そして、日本はハワイに次ぐ51番目の州として、アメリカ合衆国の属国になってしまうのです。
次号に続く
2012年
11月
30日
金
平成24年12月1日
日本がTPPに参加すると、アメリカは何を要求してくるのでしょうか?
1.医薬品価格規制の撤廃
まず最初に予想されるのが、医薬品価格の吊り上げです。
日本では、医薬品の価格を製薬会社が自由に設定する事は許されていません。
この医薬品価格規制の事を薬価(やっか)制度、医薬品につけられた公定価格のことを薬価と言います。日本に薬価制度が存在するのは、自由価格制にすると製薬会社が法外な値段を付けて全ての患者が公平な治療を受けられなくなる可能性があるからです。
医薬品の新規性(画期的であるか)、有用性(医療に役に立つか)の度合いに応じて、開発企業が相応の利益を確保できる程度に、薬価が決定されます。
あまりに安い価格になってしまっては、日本で医薬品を販売しようという製薬会社が無くなってしまうからです。
薬価は2年ごとに見直され、ほとんどが強制的に引き下げられます。
上がることは、まずありません。これを「薬価改定」と呼びます。
日本の薬価制度と似たような仕組みは世界各国で取り入れられています。
医薬品の価格を製薬会社が自由に決められるのはアメリカだけです。
アメリカには日本のような薬価制度が存在しないからです。
日本の薬価制度(医薬品価格規制)の撤廃は、米国通商代表部(USTR, Office of the United States Trade Representative)が毎年発表する「外国貿易障壁報告書」で、繰り返し要求し続けてきました。
「院長から一言(本年9月1日)」で述べたように、米国通商代表部は2011年2月(菅内閣時代)に、「日米経済調和対話」で以下の要求をしてきました。
① 新薬創出加算を恒久化し、加算率の上限を撤廃せよ(2年ごとに行われる薬価改定を廃止し、薬の価格を製薬会社が希望する高値(たかね)に据え置け)。
②市場拡大再算定ルール(新薬が当初の予測以上に売れた場合は
その薬価を引き下げる)を廃止せよ。
また、2011年9月(野田内閣時代)には、米国通商代表部は「医薬品へのアクセス拡大のためのTPP貿易目標」で薬価決定の際の透明性の確保(薬価決定の際には製薬会社の意見も聞け)などを要求してきました。
日本医師会も、もし日本がTPPに参加すれば、アメリカが中医協(中央社会保険医療協議会)での薬価協議に参加させろと要求してくるだろうと、警鐘(けいしょう)を鳴らしています。
このような要求はアメリカだけが行ってきたのではなく、実は日本の大手製薬企業も同様の要求をしてきていたのですが、これまで財務省・厚生労働省は薬剤費抑制の視点から拒否し続けてきたのです。
しかし、日本がTPPに参加すれば、アメリカが非関税障壁撤廃の原則を楯(たて)に、これらの要求を強めるのは必定(ひつじょう)であり、オバマの飼い犬ポチに成り下がった民主党政権が抵抗する事など不可能です。
次号に続く
2013年
1月
01日
火
平成25年1月1日
明けましておめでとうございます。
昨年末に、民主党・野田政権に替わり、自民党・安倍政権が誕生しました。
自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」事を総選挙の公約にしていました。ところが、選挙後のオバマ大統領との電話会談で、安倍氏は「TPPについては協議内容を把握してどう対応するか考える」と、早くも参加に向けて前向きな発言を行いました。そして、今月にも安倍首相が訪米し、日米首脳会談が行われる予定です。そこで、オバマが安倍氏にTPP交渉参加を強く求めてくるのは必然です。
これに対して、安倍氏がオバマに面と向かって" No ! "と言えるでしょうか?
私は、言える訳がないと思います。日本はTPP参加を約束させられてしまうでしょう。
ここからは、先月号からの続きです。
日本で製造販売されている医薬品には、アメリカの製薬会社が特許を持っているものが多くあります。アメリカは日本の医薬品市場で、約20%の市場占有率を誇(ほこ)っているのです。
TPPは関税及び非関税障壁の撤廃が原則で、国内法より上位とされています。
外国の企業が規制緩和・市場開放によって「権利」を獲得した場合、その「権利」を元に戻す事はできません。アメリカの製薬会社が特許を楯(たて)に薬価の撤廃を要求すれば、新薬の価格は確実に上昇するでしょう。
また、ジェネリック(後発)医薬品に関しては、もっと恐ろしい事態が予想されます。皆さんもご存じの通り、ジェネリック(後発)医薬品とは新薬特許が切れた薬と同じ成分で安価に製造した医薬品です(当然、薬価も先発品より安く設定されます)。
特許が切れているのですから、これまでは既存医薬品の臨床データを使用する事が認められてきました。ところが、アメリカは「知的財産」分野で、特許尊重義務を強化して臨床試験をやり直す事を主張しています。
ジェネリック(後発)医薬品の大部分は先発品(新薬)の開発能力がない中小製薬会社が製造しています。開発能力がない会社が臨床試験をやり直す事など不可能に等しいです。しかし、国内法よりTPPが優先するため、アメリカの主張が認められる公算が高く、そうなれば中小製薬会社がジェネリックを製造する事は、ほぼ不可能になります。
ジェネリックの薬価は先発品よりも安く抑えられているため、現在、医療費抑制のために厚生労働省主導でジェネリックの普及が進められています。
この動きにあわせて各医薬品メーカーはジェネリックの積極生産へシフトしつつあります。ジェネリックの日本での普及率はまだ20%程度にとどまっていますが、国民への認知度が増すにつれて、毎年増加しています。
日本のTPP参加はこの流れに水を差し、新薬の価格を製薬会社の言い値通りに吊り上げるだけでなく、値段の安いジェネリックを一掃してしまい、薬剤費の高騰に拍車をかける事態になるでしょう。それに伴い、日本の医療保険財政がさらに悪化するのは確実です。そうなれば、医療機関へ支払われる診療報酬は現在以上に抑制され、医療機関の経営悪化がさらに進むでしょう。
それだけではありません。医薬品の価格上昇により、全ての患者の自己負担は確実に増加します。それにより、低所得の患者の受診抑制が生じ、国民の健康水準が悪化する事が危惧されます。他方、薬価制度が廃止されれば新薬の国内販売が早まり、癌や難病の患者には福音になるとも言えます。ただし、高額の新薬を命のある限り使い続ける事ができるのは一部の高額所得者に限られます。金持ちと貧乏人とで受けられる治療が異なる格差社会が到来する事になります。
日本がTPPに参加する事によって、「いつでも、どこでも、誰でも」平等な治療が受けられる医療保険制度は崩壊し、命の値段に差が付けられる世の中になるのです。
次号へ続く
2013年
1月
31日
木
平成25年2月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第8回
前号で、日本がTPPに参加すると、薬価制度が廃止され新薬の値段が跳ね上がるだけでなく、ジェネリックは一掃されて、薬剤費全体が高騰すると述べました。
「そんな筈(はず)はない」と疑っている方のために、アメリカが韓国、オーストラリアと締結した自由貿易協定(米韓FTA、米豪FTA)を参考までに見てみましょう。
・米韓FTA
結論から先に言えば、昨年3月に発効した米韓FTAの取り決めは、それより以前に米国通商代表部が日本に要求してきた内容と酷似しています。
①「韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を執らなければならない」
つまり、例えば薬の値段を韓国政府が安く抑えようとしても、その必要性を立証しなければ、アメリカの製薬会社の言い値で買わされるという事です。
これは薬に限らず、他の品目やサービスについても同様です。
アメリカの都合で次々と市場開放が行える仕組みなのです。
②「韓国では国内法より米韓FTAが優先適用されるが、アメリカ国内法は米韓FTAに優先する」
つまり、韓国はアメリカ製品を関税ゼロで輸入しなければならないが、アメリカは自国の企業を守るために韓国からの輸入品に関税をかけても良いという事です。
完全にアメリカ寄りの、韓国を馬鹿にした不平等協定なのです。
③「アメリカ製薬企業の医薬品の独占的特許を認め、特許期間を延長して高薬価を維持する」
つまり、アメリカが日本に要求してきた「新薬創出加算の恒久化、加算率の上限撤廃」と同じです。アメリカは日本と韓国に同じ要求をしているのです。
④「韓国政府の薬価の決め方に対して、アメリカ製薬企業が不服のある場合、見直しを申請できる独立機関を設置する。」
これは、韓国政府の社会保険政策に外国企業が干渉する事を認める条項です。
アメリカは既に同様の要求を日本に対してもしています。
韓国では、FTA交渉妥結までその内容はほとんど国民に知らされず、政府も一貫して医療の開放は無いと断言していたそうです。ところが、蓋(ふた)を開けてみれば、アメリカが韓国を植民地扱いした屈辱的な内容だったのです。
当然ながら、韓国国内では、米韓FTAは韓国側だけが義務を負う不平等協定だと批判が上がっています。
・米豪FTA
かつて、オーストラリアには、国民が医薬品を購入する際に自己負担金の一部を国が肩代わりする制度がありました。しかし、これに対しアメリカは、自国の製薬企業が知的財産権の恩恵を受けることを妨げていると主張しました。その結果、特有の効能を有すると判断される医薬品には高い薬価を設定するよう協定が結ばれました。
このため、薬剤費の高騰がオーストラリアの医療保険財政を圧迫しています。
アメリカが韓国とオーストラリアにFTAを通じて要求した事項は、日本がTPPに参加すれば、必ず日本にも要求してくるに決まっています。
そもそも、韓国がTPPに参加せずに、2国間協定である米韓FTAを選んだ理由は何でしょうか?それは、関税も非関税障壁も原則撤廃という過激な協定であるTPPに参加するよりも、2国間での調整交渉の余地があるFTAの方が有利だと考えたからです。
しかし、TPPよりも自国にとっては有利な筈(はず)のFTAにおいてさえ、韓国はこれほど不平等な、自国にとって不利な協定を結ばされているのです。
日本はアメリカとFTAすら結べていないのに、もっとハードルが高く不利な条件のTPPに参加しようとしています。その戦略性のなさに、私は驚愕(きょうがく)を覚えます。日本政府は馬鹿じゃないだろうか?と思えてなりません。
次号に続く
2013年
3月
01日
金
平成25年3月1日
先月行われた安倍首相とオバマ大統領の初の日米首脳会談で、両首脳はTPPに関して「全ての関税撤廃を約束するものではない」との共同声明を発表しました。
これにより、自民党政権は日本のTPP交渉参加へ向け大きく踏み出すことでしょう。
日本がTPPに参加すれば、アメリカが薬価制度廃止の次に要求してくると考えられるのが今回のテーマです。
2.株式会社(営利企業)の病院経営参入、混合診療の解禁
「院長から一言(昨年10月1日)」で述べたように、今までもアメリカは日本に対して何度も、営利企業の病院経営参入と混合診療の解禁を要求してきました。
小泉政権時代の2001年には、「年次改革要望書」で、病院や看護施設への民間企業参入を求めてきました。2004年には、「日米投資イニシャティブ報告書」で、混合診療全面解禁や医療への株式会社参入を求めてきました。
さらに、民主党政権下(オバマ政権誕生後)の2010年(鳩山内閣時代)には、「外国貿易障壁報告書」で、日本医療市場を外国企業に開放し、営利目的の病院が参入できるよう要求してきました。
アメリカの要求を理解するためには、2つの事柄(ことがら)が分かっていなければなりません。
「混合診療とは何であるか?」と「非営利、公益を第一義とする日本の法制度」です。
まず、混合診療について説明します。
混合診療とは、診療行為のある部分を医療保険の給付(原則7割)を受けて実施し、残りを全額患者負担で行うという、保険診療と保険外の自費診療とを混合した診療を言います。
例えば、当院でAさんの胃癌の検査・診断を保険診療(患者負担3割)で行い、治療として保険未収載の制癌剤を全額自己負担で購入・内服させたとします。
この一連の診療行為が混合診療に当たります。
現在の日本の健康保険法では、混合診療は禁止されています。
ですから、Aさんの胃癌を内視鏡で診断し、血液検査で腫瘍マーカーを測定した当院がAさんから検査・診断料の3割を頂き、支払機関に残りの7割を請求しても支払ってはもらえません。Aさんがどうしても保険未収載の制癌剤を内服したいと希望する場合には、Aさんは薬剤費だけでなく、検査・診断料も全額(10割)自己負担しなければなりません。
医薬品が保険収載されるまでにはある程度の時間がかかります。これを待ちきれない患者さん達が存在するのは事実ですし、彼らが混合診療を認めろ(Aさんの場合は、検査・診断料の7割を支払機関が当院に支払え)と主張する気持ちは分かります。
しかし、混合診療が日本で禁止されているのには、れっきとした理由があるのです。
その最大の理由は、混合診療を許してしまうと、医療や社会保障への予算配分を減額するのに躍起(やっき)になっている財務省・厚生労働省が、健康保険からの給付額を減らすために、新しい治療手技や医薬品の保険収載(公的医療保険に組み入れる事)を止(や)めてしまうためです。
普通のレントゲン検査までは健康保険で面倒見て(検査代の7割を払って)あげるけど、高額のMRI検査は自分で払って受けて下さいという世の中になってしまうのです。
次号へ続く
2013年
3月
31日
日
平成25年4月1日
混合診療禁止の第2の理由は、混合診療を認めると、安全でない治療法や医薬品が国内に広がる事に道を開くからです。
新しい技術や医薬品が保険収載されるまでにはある程度の期間を要します。
それは、安全性・有効性を確認する必要があるからです。
保険収載を待たずに自費で、安全性・有効性の確認も無いままに使えるようにする事は、患者にとって危険であるばかりでなく、治療を行う医師に対する不信も招きます。
さらに、新しい技術や新薬を開発する企業も、混合診療が認められるなら、面倒な臨床試験(安全性・有効性を確認するための検討)を行う手間を省いて、保険収載をやめてしまう可能性が高いのです。
つまり、健康保険では最先端の治療を受けられなくなってしまうのです。
混合診療禁止の第3の理由は、混合診療を認めれば、医療に貧富の格差を持ち込む事になるからです。
もしも混合診療を認めれば、先進医療や新薬は、その部分のみ全額自費で受けられるようになります。ただし、全額自費部分を支払えるのは金持ちだけです。
貧乏人は健康保険でしか治療を受けられませんが、既述したように、最新技術や新薬は健康保険の給付範囲ではなく(健康保険では受けられなく)なってしまいます。
必然的に、最新の治療が受けられるかどうかはカネ次第という格差社会が到来します。
これで、混合診療が禁止されている3つの理由がお分かり頂けたと思います。
混合診療が全面的に認められると、公的医療保険で受ける事ができる医療は最小限に縮小する反面、保険の利(き)かない医療が拡大し、患者負担が際限なく増えます。
前号で例に挙げた胃癌患者Aさんの場合、必要なのは混合診療の解禁では決してありません。世界標準となっている有効で安全な新薬を速やかに保険収載する事こそが、本当の解決策なのです。
続いて、「非営利、公益を第一義とする日本の法制度」について説明します。
医療法は、医療を営利の対象とする事を厳しく禁じています。また、医師には医療を司(つかさど)るだけでなく、基本的人権の担い手であるとの立場も与えています。
そして、「経営も含めて医師が担う」事により、医療の公益性も保持しています。
従って、医療法人の利益を出資者に配当する事は禁じられています。
利益は全て設備や人材に再投資するよう義務づけられているのです。
一方、営利企業である株式会社は、生業(なりわい)として反復継続して利益を上げ、それを株主に配当する事を目的としています。確かに、医療法で定める医療機関が医療の再生産を行うためには、一定の利益を必要とします。また、医師が高度な専門性に見合うだけの報酬を得るためにも、やはり一定の利益を必要とします。しかし、これらの利益と、株式会社が追求する「営利」とは、全く次元が異なる異質のものなのです。
「公益医療」の目的は、国民の生命と健康を保持するために、全ての国民に、いつでも、どこでも、最適な医療を提供する事です。ここが、営利の追求を目的とし、医療を営利の手段や投機の対象として扱う「株式会社の医療」との根本的な違いです。
また、医師法は医師に診療の求めに応じる義務を課しています。
たとえ支払い能力に欠ける患者であっても、医師は診療を拒否できません。
しかし、株式会社では、お金を回収できないことが分かっている人にサービスを提供すれば背任行為となります。
このように、「公益医療」と「株式会社の医療」とは、本質的に対立するものなのです。
次号に続く
2013年
5月
02日
木
平成25年5月1日
先月20日、すでにTPP交渉に参加している11カ国すべてが日本の参加を承認しました。これにより、早ければ7月から日本もTPP交渉に加わる事になります。
しかし、先月12日に締結された日米事前協議の内容は、日本がアメリカに対して一方的に譲歩させられたものでした。すなわち、アメリカが日本車を輸入する際にかける関税は好きなだけ据え置く一方で、日本が輸入するアメリカ車の台数を2倍以上に増やす事を日本に約束させるという不公平な内容です。さらに日本郵政に対して、アメリカの民間保険会社と対等の競争条件を受け入れるまで、新たな保険業務の開始を許さないという理不尽な条件まで付けられました。
日本がTPP交渉に参加する前に、すでに完全な不平等条約になっているのです!
安倍首相は「今後の交渉で、あらゆる努力により、悪影響を最小限にとどめる」などと悠長(ゆうちょう)な事を言っていますが、事前協議の段階でこんな屈辱的な「降伏」文書に署名させられた、アメリカの属国日本が、TPPの本交渉で国益を守れる筈(はず)がありません。
前号までの説明を読んで下さった賢明な皆さんは、アメリカが日本に対して、営利企業の病院経営参入と混合診療の解禁を同時に要求してきた理由がお分かりになったと思います。日本がTPPに参加すれば、この要求が強まるのは必至です。
日本の医療保険制度では、検査・治療などの手技や投薬など診療行為の全てにおいて、細かく公定価格(診療報酬・薬価)が設定されています。日本の国民は全員、何らかの公的健康保険に加入しており、誰もが同じ価格で高レベルの医療を受ける事ができます。しかも、20年以上続く医療費抑制政策によって、その価格は低く抑えられています。
この状況下では、営利企業や投資家が日本の医療に参入しても、儲(もう)かりません。
日本で病院経営をして金儲けをするためには、現在の混合診療を禁止する医療保険制度は邪魔なのです。営利企業は沢山(たくさん)儲けて株主に配当しなければなりません。
そのためには、混合診療を解禁して自費診療を拡大する必要があるのです。
金持ちの患者を集めて、高額の自費診療を行えば高い収益を上げられます。
そして、高額の支払いに備えて、民間の医療保険に加入する人が増えますから、民間の保険市場が拡大し、国内・国外の保険会社が民間医療保険を扱うようになります。
貧乏人は民間医療保険の保険料など払えませんから、高額の自費診療を受ける事はできません。
高額な自費診療を行う病院が増えると、国は「病院は自費診療で儲ければ良い」と考え、公的医療保険の診療報酬を引き上げなくなります。地域に高所得者が少なく、公的医療保険で地道に診療していた地方病院は、経営が立ち行かなくなります。
株式会社病院は収益を上げるために、コスト削減も厳しく行わなければなりません。安全性が損なわれ、荒っぽい診療も横行するでしょう。医療の質の低下が懸念されます。
また、利益を優先する株式会社は、生き残りに迫られ、小児科や産科など訴訟リスクが高く不採算な分野から撤退するでしょう。また、少子高齢化が顕著な過疎地で病院を経営しても儲かりませんから、過疎地からは株式会社病院は撤退するでしょう。
こうして、日本がTPPに参加する事によって、日本の医療には所得による格差、地域による格差、診療科による格差が広がっていくでしょう。
3.手術手技や検査手技の特許権主張
日本がTPPに参加すれば、アメリカが薬価制度の廃止、営利企業の病院経営参入、混合診療の解禁に続いて要求してくると予想されるのが、手術手技や検査手技の特許権主張です。アメリカで開発された手術・検査の手技は、高い特許料を支払わないと、日本で行えなくなるのです。
金持ちしか高額な特許料は払えません。
貧乏人は命の値段も安くなってしまいます。
まさしく、地獄の沙汰もカネ次第です。
次号へ続く
2013年
5月
31日
金
平成25年6月1日
ペルーの首都リマで開かれた第17回TPP全体交渉会合は5月24日、参加国による交渉を年内に終了する事を確認し、閉幕しました。
次回会合は7月、マレーシアで行われる事が決まり、日本が僅(わず)か3日間しか参加できない事も確実になりました。
しかも、これまでの交渉内容をまとめた書類を日本が入手できるのは7月の会合直前です。
先に途中参加したカナダとメキシコが、先行参加国から、「既に固まった内容の見直しはしない」と通告された経緯からすると、7月の会合の内、僅か3日間で日本が意見を述べる機会はほとんどないと予想されます。
つまり、日本が正式に参加できるTPP交渉の場は9月、10月のたった2回しかないのです。
前号までの説明で、日本がTPPに参加すると、いつでも、どこでも、誰もが高い水準の平等な医療を受けられる医療保険制度(国民皆保険)が崩壊するという事が理解頂けたと思います。
民主党の野田前首相も自民党の安倍首相も「TPPに参加しても日本の医療保険制度は守る」と断言しました。
マスコミも「TPPに参加しなければ、日本は世界から孤立する。参加した上で、日本に不利な条件は交渉して回避すれば良い」という論調がほとんどです。
しかし、それはとんでもない思い違いです。
世の中はそんなに甘くはないのです。
なぜなら、日本の主張を議論に反映させる時間が極めて限られている上に、TPPに織り込まれるISDS条項やラチェット条項などが日本の呑気(のんき)な楽観論を許さないからです。
1.ISDS(Investor State Dispute Settlement、投資家対国家の紛争解決)条項
これは、投資先の国が行った施策・規制によって不利益を被ったと、企業や投資家が判断すれば、裁判に訴える事ができるというものです。
ワシントンの世界銀行に置かれる「国際投資紛争解決センター」で審理が行われますが、審理は非公開で一審制です。
判決に不服があっても上訴できません。
第一、アメリカに存在するセンターがアメリカに有利な判決を下すのは自明です。
アメリカ企業の勝訴率は何と80%です。
訴訟大国のアメリカ企業がこの条項を用いて日本政府を訴える可能性が極めて高い上に、これまでの判例は日本にとって極めて不利です。
例えば、日本の薬価制度を非関税障壁として、アメリカの製薬会社がISDS条項を楯(たて)に損害賠償を起こせば、日本に勝ち目はありません。
TPPの条約は国内法よりも優位なので、日本の健康保険法は外国企業の参入障壁として改正を強いられます。
日本の公的医療保険制度が破綻するのです。
2.ラチェット条項
ラチェットとは一方向にだけしか回転しない歯車です。
つまり、この条項は、一度規制を緩和すると、どのような不都合が生じても元に戻せないという規定です。
例えば、営利企業による病院運営を認可した後で、日本の医療に悪影響を及ぼすからという理由で取り消そうとしてもできないのです。
3.NVC(Non-Violation Complaint)条項
非違反提訴と訳されます。
つまり、アメリカ企業が日本で期待した利益を得られなかった場合に、日本がTPPに違反していなくても、アメリカ政府が企業に替わって日本を提訴できるというものです。アメリカ企業の日本医療への参入がうまく行かないと、日本の健康保険制度が不適切だと言って、アメリカ政府から改変を迫られる訳です。
大変理不尽で不平等な条項です。
日本が一旦TPPに参加すると、以上のような複数の不条理な条項に縛られ、公的医療保険制度(国民皆保険)が崩壊に向かうのは避けられません。
TPPは他国のために国内制度の規制緩和・市場開放を推し進め、政府の政策として固める事を目的としています。
国内に反対意見があっても、国際的な約束を最優先させられます。
これは、将来の政権をも拘束します。
政権が代わって内容を変更したいと考えても、それを実現する事は極めて困難です。
他国の企業・投資家の権利が国民の権利よりも上位に位置付けられるのです。
すなわち、TPPは憲法上の重大な問題を抱えていると言えます。
TPP参加は最終的に国会で批准します。
日本の国民皆保険を死守するためには、国会審議を通じてTPP参加を否決する必要があるのです。
皆さん、大いに反対世論を盛り上げようではありませんか!
今回で、TPPについての考察を終了します。