平成24年11月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第5回
前号で述べたように、アメリカは日本の公的医療保険制度に対して、
様々な内政干渉とも言える要求を行ってきました。
アメリカの日本医療市場開放要求に呼応して、日本政府も公的医療保険の営利産業化(医療への民間企業参入や営利目的の外国人患者勧誘)を徐々に進めてきました。
・2011 年1月、民主党政権は医療機関における治療だけでなく、人間ドック・健康診断から温泉湯治などの療養に至るまで、幅広い分野を対象とした「医療滞在ビザ」を創設しました。いわゆる「医療ツーリズム」の解禁です。
・同年4月、民主党政権は医療法人の役員を兼務できる営利企業役員の範囲を拡大すると閣議決定しました(現在の医療法では、医療法人の役員と他の法人の役員の兼務は制限されています)。
・同年6月、営利企業が特別養護老人ホームを設置できるように、法改正が行われました。
・同年7月、民主党政権は公的医療保険の給付範囲を縮小する(保険で行える医療を制限する)事を提言しました。また、国際医療交流を推進し、外国人患者や外国人医療従事者(医師や看護師)を積極的に受け入れる方針を示しました。
政府は昨年10月まで、「公的医療保険制度はTPPの議論になっていない模様」としてきました。野田首相も昨年11月11日に「国民皆保険は守る」と述べていました。
けれども、その後の発言からは国民皆保険を堅持するという強い姿勢はうかがえません。
事実、昨年11月15日の参議院予算委員会で「TPP参加によって公的保険制度が根本から変えられる事もあるかも知れない」と述べています。
政府は、「TPPは多国間交渉であり、アメリカの要求がそのまま通る訳ではない」と楽観的に構えています。しかしながら、オバマ大統領は今月に行われる大統領選挙において、高い失業率というマイナス材料を抱えて再選が危ぶまれており、焦燥感を募らせています。TTPに関しても日本に対する要求のトーンを強めてくるのは必至です。
日本がアメリカと共に経済統合の枠組み作りを主張する事など出来ません。
TPP交渉を主導するのは間違いなく最大の大国アメリカです。
今の日本は、アメリカに妥協せずに主張を押し通せるような立場にはないのです。
日本の対米従属はいつもの事ですが、最近、その傾向はより顕著です。
尖閣諸島・竹島・北方領土などの領土問題が深刻化しているからです。
日本は普天間基地移設問題でアメリカに借りを作った上に、領土問題ではアメリカに助けてもらわなくてはならない立場にいます。
オバマ大統領の飼い犬ポチに成り下がった野田首相は、日本のTPP参加を契機にこれまで以上に次々と繰り出されるアメリカの要求を無条件に飲まざるを得ないでしょう。
そして、日本はハワイに次ぐ51番目の州として、アメリカ合衆国の属国になってしまうのです。
次号に続く