令和5年9月 マイナンバーカードと健康保険証
当院は今月18日で開業満23年になりました。
おかげ様で、来院患者数は29,000人を超えました。
この「院長挨拶」も、今回で16回目です。
ロシアとウクライナの戦争が続いています。
狂人プーチンを誰かが暗殺してくれれば、ロシア軍は瓦解し、ウクライナから撤退するでしょう。
スーパーマン、バットマン、007のジェームス・ボンド、ミッション・インポッシブルのイーサン・ハント、誰でも良いのです。
正義の味方が出現することを、毎日祈っています。
ところで、日本政府は「最先端のデジタル国家になる」ことを目標に、国民の個人情報を一括管理し、それを大規模かつ効率的に利用するデジタル化政策を推進しています。
そして、この「デジタル化」をデジタルトランスフォーメーションDigital Transformation(略してDX)と呼ぶそうです。
政府(経済産業省、総務省、デジタル庁)はDXの中核に健康・医療・介護分野を対象とした医療DXを位置付け、工程表を発表しました。
医療DXはマイナンバーカードの取得とマイナポータル(政府が管理するウェブサイトで、オンライン窓口も兼ねる)の利用を前提としています。
医療DXの目的は、デジタルデータ化された個人の医療情報を基(もと)に、公的医療費を抑制すると共に、新たな産業基盤につなげることです。
マイナンバーカードとは、身分証明書の一種です。
運転免許証、健康保険証、パスポート、学生証などと同じです。
これら紙の身分証明書と異なり、マイナンバーカードは電子的システムによって本人確認を行うための手段です。
マイナンバーカードを用いてログインすれば、ログインしたのが本人であることが証明されます。
紙の身分証明書は偽造可能ですので、「なりすまし」が可能です。
しかし、マイナンバーカードは偽造不可能ですので、インターネットを介して様々な取引を行う際に、マイナンバーカードで本人確認を行えば、安全な取引が可能となり、便利です。
ただし、どのような手続きが便利になるのかが問題です。
現時点では、住民票や印鑑登録証明書がコンビニエンスストアで取得できる程度で、極めて限定的です。
生活が格段に便利になる訳ではありません。
つまり、マイナンバーカードの問題点とは、使い道が限られることなのです。
また、マイナンバーカードの取得は法律上、任意であり、持たなければいけないという義務はありません。
私も持っていません。
使い道があまりないため、多くの国民はマイナンバーカードを、私のように持たないか、持っていてもほとんど使わないか、のどちらかです。
持っていた方が便利ならば、強制されなくても取得する人が増えるはずです。
政府は2万円の「マイナポイント」で釣って、国民にマイナンバーカードを作らせましたが、「作ったけれど使っていない」人が大多数です。
一方、政府は療養担当規則という法律を改定して、我々医療機関にオンライン資格確認のシステム導入を義務付けました。
オンライン資格確認とは、インターネットを使って、患者の保険資格や薬剤情報・特定健診結果などの情報を閲覧することです。
しかし、オンライン資格確認は、マイナンバーカードがなくても保険証番号が分かれば行えます。
つまり、マイナンバーカードがなくても、患者は今まで通り保険証さえ持参すれば受診できます。
医療機関がカードリーダーを常備してさえいれば、保険証情報を手入力すれば事足りるからです。
しかし、政府は、現行の健康保険証を来年(令和6年)秋に廃止し、マイナンバーカードに一本化するとの方針を発表しました。
先に述べたように、マイナンバーカードの取得は法律上任意なので、政府は今さら義務化するとは言えません。
そこで、健康保険証を廃止することで、否応なくマイナンバーカードを持たざるを得なくしようという魂胆です。
任意であるべきマイナンバーカード取得を、政府が無理やり強制しているのです。
政府がこれほどまで、国民にマイナンバーカード取得を押し付けたい理由は何でしょうか?
それは、マイナンバーと紐付けして、国民一人一人の所得、預金額、納めた税金・社会保険料、医療・年金等の社会保障給付額を総合的に把握し、比較する仕組みを導入するためです。
この仕組みは、負担と給付の等価交換を原則とし、「社会保障個人会計」と呼ばれます。
つまり、「あなたはこれだけの金額しか国に納めていないから、国があなたに支給できる金額もこれだけです」という社会にしようという狙いです。
年金も医療も、自分が払った分しかもらえない、受けられない時代がもうすぐ来るのです。