平成24年8月1日
TPPでどうなる? 日本の医療 第2回
そもそも、TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)(環太平洋経済連携協定)とは、一体どんなものなのでしょうか?
TPPはもともと、2006年にシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリという4つの小国の間で締結された経済連携協定(Pacific 4、通称P4)に過ぎませんでした。
そこに、2010年3月にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの4カ国が、さらに10月にはマレーシアが加わって計9カ国となりました。
この9カ国で2015年までに広域経済連携協定を締結する事を目指しています。
このように書くと、自然な成り行きのように見えますが、実際はそうではありません。アメリカが途中から加わったのには理由があるのです。
TPP9カ国のGDP(国内総生産)の合計に占めるアメリカ1国の割合は87%にも及び、他の8カ国の合計13%を遙かに凌駕(りょうが)しています。事実上、アメリカが後から出てきてTPPを乗っ取ってしまった訳です。とは言え、大国アメリカが小国8カ国を相手に自由貿易をしても、あまり旨みはありません。2009年にオバマ大統領がTPPへの参加を表明した当初、「ウオールストリート・ジャーナル」などの米国内メディアから「なぜアメリカがTPPに参加する必要があるのか?」と批判されていましたが、もっともな疑問です。
しかし、ここに日本が加われば、話は別です。もし、TPPに日本が加わって10カ国になれば、GDPで見ると日米2カ国が実に91%を占めます(日本24%、米国67%)。
TPPは事実上、日米の2国間協定となるのです。アメリカの参加は、最初から日本の参加を前提にしていたのです。アメリカは、日本を引きずり込んでアメリカの「草刈り場」にする算段で、TPPを乗っ取ったのです。
アメリカがこのように露骨に日本を巻き込んでまでTPPを乗っ取ったのには、2008年のリーマンショック以降の大不況という背景があります。
オバマ政権におけるTPPとは、大不況を克服するための一手段です。
すなわち、「関税・非関税障壁を撤廃する事によって、2009年から2014年までの5年間で輸出を倍増し、アメリカの経済成長と雇用創出を成し遂げる。そのための道具としてTPPを利用しよう」というのが、オバマ政権の戦略なのです。
「普天間基地を最低でも沖縄県外に移設する」などと出来もしない約束をした挙げ句、辺野古以外の代替地が見つからずに右往左往して日米関係にミソを付けてしまった民主党政権は、これ以上アメリカのご機嫌を損ねる訳にはいかないのです。
だから、日本国内でTPP参加の是非が世論を二分しているにも拘(かか)わらず、オバマ大統領に尻尾(しっぽ)を振って付いて行こうとしているのです。誠に情けない限りです。
次号に続く