平成24年12月1日
日本がTPPに参加すると、アメリカは何を要求してくるのでしょうか?
1.医薬品価格規制の撤廃
まず最初に予想されるのが、医薬品価格の吊り上げです。
日本では、医薬品の価格を製薬会社が自由に設定する事は許されていません。
この医薬品価格規制の事を薬価(やっか)制度、医薬品につけられた公定価格のことを薬価と言います。日本に薬価制度が存在するのは、自由価格制にすると製薬会社が法外な値段を付けて全ての患者が公平な治療を受けられなくなる可能性があるからです。
医薬品の新規性(画期的であるか)、有用性(医療に役に立つか)の度合いに応じて、開発企業が相応の利益を確保できる程度に、薬価が決定されます。
あまりに安い価格になってしまっては、日本で医薬品を販売しようという製薬会社が無くなってしまうからです。
薬価は2年ごとに見直され、ほとんどが強制的に引き下げられます。
上がることは、まずありません。これを「薬価改定」と呼びます。
日本の薬価制度と似たような仕組みは世界各国で取り入れられています。
医薬品の価格を製薬会社が自由に決められるのはアメリカだけです。
アメリカには日本のような薬価制度が存在しないからです。
日本の薬価制度(医薬品価格規制)の撤廃は、米国通商代表部(USTR, Office of the United States Trade Representative)が毎年発表する「外国貿易障壁報告書」で、繰り返し要求し続けてきました。
「院長から一言(本年9月1日)」で述べたように、米国通商代表部は2011年2月(菅内閣時代)に、「日米経済調和対話」で以下の要求をしてきました。
① 新薬創出加算を恒久化し、加算率の上限を撤廃せよ(2年ごとに行われる薬価改定を廃止し、薬の価格を製薬会社が希望する高値(たかね)に据え置け)。
②市場拡大再算定ルール(新薬が当初の予測以上に売れた場合は
その薬価を引き下げる)を廃止せよ。
また、2011年9月(野田内閣時代)には、米国通商代表部は「医薬品へのアクセス拡大のためのTPP貿易目標」で薬価決定の際の透明性の確保(薬価決定の際には製薬会社の意見も聞け)などを要求してきました。
日本医師会も、もし日本がTPPに参加すれば、アメリカが中医協(中央社会保険医療協議会)での薬価協議に参加させろと要求してくるだろうと、警鐘(けいしょう)を鳴らしています。
このような要求はアメリカだけが行ってきたのではなく、実は日本の大手製薬企業も同様の要求をしてきていたのですが、これまで財務省・厚生労働省は薬剤費抑制の視点から拒否し続けてきたのです。
しかし、日本がTPPに参加すれば、アメリカが非関税障壁撤廃の原則を楯(たて)に、これらの要求を強めるのは必定(ひつじょう)であり、オバマの飼い犬ポチに成り下がった民主党政権が抵抗する事など不可能です。
次号に続く