TPPでどうなる? 日本の医療 第7回

平成25年1月1日 

 

 明けましておめでとうございます。

 

 昨年末に、民主党・野田政権に替わり、自民党・安倍政権が誕生しました。

自民党は「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」事を総選挙の公約にしていました。ところが、選挙後のオバマ大統領との電話会談で、安倍氏は「TPPについては協議内容を把握してどう対応するか考える」と、早くも参加に向けて前向きな発言を行いました。そして、今月にも安倍首相が訪米し、日米首脳会談が行われる予定です。そこで、オバマが安倍氏にTPP交渉参加を強く求めてくるのは必然です。

これに対して、安倍氏がオバマに面と向かって" No ! "と言えるでしょうか?

私は、言える訳がないと思います。日本はTPP参加を約束させられてしまうでしょう。

 ここからは、先月号からの続きです。

 

 日本で製造販売されている医薬品には、アメリカの製薬会社が特許を持っているものが多くあります。アメリカは日本の医薬品市場で、約20%の市場占有率を誇(ほこ)っているのです。

 TPPは関税及び非関税障壁の撤廃が原則で、国内法より上位とされています。

外国の企業が規制緩和・市場開放によって「権利」を獲得した場合、その「権利」を元に戻す事はできません。アメリカの製薬会社が特許を楯(たて)に薬価の撤廃を要求すれば、新薬の価格は確実に上昇するでしょう。

 また、ジェネリック(後発)医薬品に関しては、もっと恐ろしい事態が予想されます。皆さんもご存じの通り、ジェネリック(後発)医薬品とは新薬特許が切れた薬と同じ成分で安価に製造した医薬品です(当然、薬価も先発品より安く設定されます)。

特許が切れているのですから、これまでは既存医薬品の臨床データを使用する事が認められてきました。ところが、アメリカは「知的財産」分野で、特許尊重義務を強化して臨床試験をやり直す事を主張しています。

 ジェネリック(後発)医薬品の大部分は先発品(新薬)の開発能力がない中小製薬会社が製造しています。開発能力がない会社が臨床試験をやり直す事など不可能に等しいです。しかし、国内法よりTPPが優先するため、アメリカの主張が認められる公算が高く、そうなれば中小製薬会社がジェネリックを製造する事は、ほぼ不可能になります。

 ジェネリックの薬価は先発品よりも安く抑えられているため、現在、医療費抑制のために厚生労働省主導でジェネリックの普及が進められています。

この動きにあわせて各医薬品メーカーはジェネリックの積極生産へシフトしつつあります。ジェネリックの日本での普及率はまだ20%程度にとどまっていますが、国民への認知度が増すにつれて、毎年増加しています。

 日本のTPP参加はこの流れに水を差し、新薬の価格を製薬会社の言い値通りに吊り上げるだけでなく、値段の安いジェネリックを一掃してしまい、薬剤費の高騰に拍車をかける事態になるでしょう。それに伴い、日本の医療保険財政がさらに悪化するのは確実です。そうなれば、医療機関へ支払われる診療報酬は現在以上に抑制され、医療機関の経営悪化がさらに進むでしょう。

 それだけではありません。医薬品の価格上昇により、全ての患者の自己負担は確実に増加します。それにより、低所得の患者の受診抑制が生じ、国民の健康水準が悪化する事が危惧されます。他方、薬価制度が廃止されれば新薬の国内販売が早まり、癌や難病の患者には福音になるとも言えます。ただし、高額の新薬を命のある限り使い続ける事ができるのは一部の高額所得者に限られます。金持ちと貧乏人とで受けられる治療が異なる格差社会が到来する事になります。

日本がTPPに参加する事によって、「いつでも、どこでも、誰でも」平等な治療が受けられる医療保険制度は崩壊し、命の値段に差が付けられる世の中になるのです。                      

                            次号へ続く

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