令和4年10月1日
サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局 Santa Maria Novella
現存する世界最古の薬局です。
13世紀、フィレンツェに移住してきたドミニコ会の修道院サンタ・マリア・フラ・レ・ヴィニェSanta Maria Fra Le Vigne(「ブドウ畑の聖母マリア」)の修道僧が薬草を栽培して薬を調合したのが始まりです。
17世紀には薬局として認可され、一般営業を開始しました。
この修道院が、後のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会へと発展しました。
日本を始め、世界中に支店がありますが、もちろんフィレンツェが本店です。
店に入ると、すぐに、素晴らしい香りに魅了されます。
800年以上の伝統が守られており、美術館や教会かと見間違(みまちが)うような天井画と、年代物の家具・調度品を揃(そろ)えた内装に圧倒されます。
壁には、アルバレッロと呼ばれる陶器の壷に入った軟膏や薬品が並んでいます。
今もなお、オーデコロン「アックア・デッラ・レジーナAcqua della Regina(王妃(おうひ)の水)」や石鹸、香水、スキンケアなど、高品質な商品は世界中の人々に愛されています。
かつては、気絶した際の気付け薬も製造していたそうです。
「王妃の水」はフランス王アンリ2世の妃(きさき)カトリーヌ・ド・メディシスに捧げられた香水です。
後の18世紀になって、イタリア人の薬剤師がこの香水をドイツのケルンKöln(フランス語ではコロンCologne)で作ったことから、"eau de Cologne" オーデコロン(「ケルンの水」、オー"eau"はフランス語で「水」)と呼ばれるようになりました。
つまり、オーデコロンの元祖という訳です。
「アックア・デッラ・レジーナ」は、現在でもサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局の主力商品です。
この薬局のオンラインストアを見ると、1本100mlで、17,600円でした。
読者諸賢も奥様へのプレゼントにいかがでしょうか?
私がおもしろいと思ったのは、アルケルメスAlkermesというリキュールです。
これは、サボテンにたかる貝殻虫(かいがらむし)を乾燥させ、体内に蓄積されているコチニールと呼ばれる色素を抽出して、養命酒のような酒にした逸品です。
コチニールは天然の赤い色素として、昔から世界各地で使われており、カンパリなどの酒や清涼飲料水、ハムや蒲鉾(かまぼこ)などの着色に広く用いられています。
ケルメスKermesは、「貝殻虫」という意味ですが、深紅(しんく)を意味するアラビア語キルミズ"qirmiz"(英語ではクリムゾン"Crimson")に由来しています。
私はまだ、アルケルメスを飲んだことがありませんが、ネット通販でも買えるようですので、近いうちに取り寄せて、試してみようと思っています。