令和5年3月1日
国立フィレンツェ美術学院
(アカデミア・ディ・ベッレ・アルティ・フィレンツェ)
ここは、かつて、療養所を兼ねた修道院でした。
18世紀後半に、トスカーナ大公ピエトロ・レオポルドが、フィレンツェにある幾多の美術学校を一つにまとめ、現在の地に、公立の美術学校と付属美術館を設立しました。
これが、フィレンツェ美術学院とアカデミア美術館の始まりです。
当然、美術学院と美術館は建物内で繋がっていて、自由に往来できます。
美術学院にも、アカデミア美術館に劣らず、興味ある作品が多く展示されています。
例えば、「臨終の場面を描いた浮き彫り(レリーフ)」、「幼年期のジグムント・クラシンスキー(詩人)と、その母マリアの死」「ピサの墓地に添えられた、死者を弔(とむら)う婦人像」「知恵と正義と戦いの女神アテナ像」など、枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がありません。
アテナは全能の神ゼウスと、巨神族の女神メティスの娘として生まれました。
しかも、ゼウスの頭の中から、槍(やり)を手にし、頭に兜(かぶと)を被(かぶ)った姿で出てきたのです。
父親が全能の神で、母親メティスも思慮深い女神として知られていましたから、アテナは「知恵と正義の女神」となりました。
オリンポス十二神の一人です。
アテナは「戦いの女神」でもありますが、軍神アレスのように残虐・血・殺戮(さつりく)ではなく、戦略・戦術の知的な分野を司(つかさど)り、戦車や武具を発明しました。
アテナは人類を賢(かしこ)くし、文明を発展させるために、その知恵を惜しみなく与えました。
すなわち工芸や医術、航海、紡績、建築、造船など様々な技術の女神として、人間達の生活に恩恵を与えました。
また、アテナは勇者達に援助や助言をし、武器を与え、時には戦いに付き添いました。
例えば、ペルセウスが怪物ゴルゴン3姉妹の一人メドゥーサを退治するのを援助しました。
また、ヘラクレスの成功の陰には、常にアテナがいました。
ギリシャの首都アテネの名も、もちろん、その守護神であるアテナに由来します。
アテナに関わる物をもう一つ披露します。
ギリシャ神話において、ゼウスが娘アテナに与えた防具を「アイギスAegis」といいます。アイギスは蛇で縁(ふち)取られており、すべての災(わざわ)いや邪悪を払う魔力がありました。
勇者ペルセウスも、アテナから借りたアイギスを使ってメドゥーサを退治したのです。
アイギスの英語読みが「イージス」です。
アメリカ海軍の艦隊防空システム(イージス システム)の語源です。全ての攻撃を防ぐ「鉄壁な盾(たて)」だという訳です。
そして、アテナの傍(かたわ)らにはいつも、翼(つばさ)を持つ勝利の女神ニケNikeが従っていました。
ニケNikeは英語では「ナイキ」と発音します。
世界的スポーツ用品メーカーの社名「ナイキ」は、ギリシャ神話の勝利の女神に由来しているのです。
この会社のロゴマークは、この女神の翼をイメージした物です。
ギリシャ神話の勝利の女神ニケは、ローマ神話ではヴィクトリアVictoriaと呼ばれます。
これは、もちろん、英語の"victory"(勝利)の語源です。