平成25年9月1日
先月、内閣官房社会保障改革担当室が発表した「社会保障・税番号制度について」には、共通番号制の役割が以下のように明確に示されています。
「行政機関等の間や業務間の連携が行われることで、より正確な情報を得ることが可能となり、真に手を差し伸べるべき者に対しての、よりきめ細やかな支援が期待される」
ところで、経団連は長年に亘(わた)り、共通番号制導入を政府に対して求めてきました。
社会保障個人会計も元経団連会長の奧田氏らが提案したものです。
経団連の主張の要点を述べます。
「企業には更なるコスト低減が必要である。
国民の税・保険料負担増加や、将来への負担転嫁に歯止めをかける事も必要である。
そのため、国民の生活は自立・自助を基本とするべきであり、これを前提として社会保障制度の改革を進める事が必要である。
そのために納税・社会保障・福祉制度に共通する番号制度が必要である。
そして、生活履歴に基づくサービス個別化・差別化のために共通番号を利用するべきである。さらに、共通番号制を民間利用して、国民の自立につなげるべきである」
内閣官房が共通番号制度の役割を説明するのに用いる「真に手を差し伸べるべき者」とはどういう意味でしょうか?
また、経団連が企業・国民の負担を軽減するために、共通番号制を「民間利用」して促進する「自立・自助」とは何でしょうか?
内閣や経団連が共通番号制を利用して目指す社会とは、自分が納めた税金や保険料を上回る多額の公費を使う人々を社会にとっての「お荷物」として切り捨てる社会なのです。
まず、共通番号によって得られた個人情報、すなわち生育・学業・職業・疾病・投薬などの生活歴、身体・精神の障害の有無や程度、家族状況、立ち寄り先などの情報を総合的に利用して国民が詳細に仕分けられます。
そして、就労可能なのに就労していない者、就労の努力をしない生活保護受給者、完治の見込みがない病人、社会的負担ばかりが大きいと決めつけられた障害者や高齢者などは「支援をすべきでない人」という烙印(らくいん)を押されます。
このような人達への社会保障給付を「非効率で無駄なもの」として、一方的に切り捨てる事で、社会保障費の抑制(しばしば、「重点化」「効率化」と聞こえの良い表現が用いられます)を図ろうというのです。
逆に、自分が納めた税金や保険料の総額に相当する公的サービス(年金、医療、介護など)の給付をまだ受けていない人達を、「真に手を差し伸べるべき者」として、選別する訳です。
「支援をすべきでない人」と「すべき人」を国の基準に従って自動的に仕分けるための個人情報(データ)を集める道具として、共通番号が使われるのです。
次号に続く