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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
令和6年11月1日
ウッフィツィ美術館
9.ゼウス
ゼウスZeusは、ギリシャ神話の主神で全知全能の神です。
全宇宙や天候を支配し、人類と神々双方の秩序を守護する天空の神であり、オリンポス十二神を始めとする神々の王です。
全宇宙を破壊できるほど強力な雷を武器とし、多神教の中にあっても唯一神的な存在で、強大で絶対的な力を持ちます。
ゼウスはローマ神話ではユピテルJuppiterです。
ユピテルは英語読みではジュピターJupiterで、太陽系で最大の惑星「木星 Jupiter」の名の由来となりました。
木星は最大だから、全能の神ゼウス(ユピテル)の名が与えられたのです。
ゼウスは世界の中心を定めるため、世界の両端から2羽の鷲(わし)を放ちました。
2羽は世界を横切って飛び、デルポイ(デルフィ)で交差しました。
デルポイは、ちょうど「大地の女神」ガイアの𦜝(へそ、オンファロスOmphalos)の部分にあたりました。
ガイアはここに神託(しんたく)所を置いて、人間に未来を教えていました。
神託所はガイアにも人間にも大切な場所ですから、ガイアは自分の息子である大蛇(だいじゃ、龍)のピュトンに守らせていました。
ゼウスは、世界の中心で、自分の意志を人間に伝え、導こうと思っていました。
そこで、ゼウスは息子のアポロンに、ガイアの神託所を強奪するよう命じました。
アポロンは白鳥が引く車に乗ってデルポイに行き、金の矢で大蛇ピュトンを殺し、大地の裂け目に投げ込みました。
そして、裂け目を聖なる石で封印し、その上にアポロン神殿を建てました。
ここでは、以後、数百年に亘(わた)り、巫女(みこ)が人間達に神のお告げを伝えました。
「デルポイ(デルフィ)の神託」あるいは「アポロンの神託」として有名です。
また、大蛇ピュトンを封印した石は「オンファロス(𦜝)の石」として現存します。
元々「中心」を意味するラテン語「ウンビリクス umbilicus」は、ゼウスの「世界の中心」の故事に因(ちな)んで、「𦜝」を意味する解剖学用語になりました。
𦜝帯(ヘソの緒)umbilical cord、𦜝(さい)ヘルニア(出べそ)umbilical herniaなどと使います。
𦜝はギリシャ語ではオンファロスomphalos、ラテン語ではウンビリクスumbilicusと呼ぶ訳ですが、英語ではネイヴァルnavelやベリー・バトンbelly button(お腹のボタン)と言います。