令和6年8月1日
ウッフィツィ美術館
7.受胎告知(続き)
前号で、ビートルズの曲でも聖母マリアが歌われていると述べ、その1例として「レディー・マドンナ」を挙げました。
しかし、もっと有名な曲の中で、ビートルズは聖母マリアを礼賛しています。
皆さんもよくご存じの名曲"let it be"(レット・イット・ビー)です。
曲の冒頭の歌詞は以下の通りです。
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me,
Speaking words of wisdom, let it be.
この中の、"Mother Mary"とはもちろん聖母マリアを指します。
そして、"let it be"は、新約聖書「ルカによる福音書 第1章」の中で、マリアがイエスを身ごもったことを告げた天使に向かって、マリアが返した言葉、
"Let it be to me according to your words."
「あなたのお言葉の通りになりますように」
(つまり、「神の御心(みこころ)に従い、私は神の子イエスを産みます」という意味)
から引用しているのです。
私はつい最近まで、"let it be"は「なるようになるさ」という意味だと思っていましたが、違いました。
以上より、名曲「レット・イット・ビー」の冒頭の歌詞を和訳すると、こうなります。
私が困難に直面すると
聖母マリアが現れ
叡智(えいち)に満ちた言葉をおっしゃる
どうか神の思(おぼ)し召(め)すままに
何と素晴らしい歌詞でしょうか!
確かに、聖母マリアの叡智に満ちた言葉が「なるようになるさ」ではオカシイですね。
やはり、「どうか神の思し召すままに」が正しいのだと、改めて思います。
医学分野にも「マリア」の名が付く病名があります。
「シスター・メアリー・ジョセフの結節」:
これは、癌が臍(へそ)に転移したため生じる結節で、予後(よご)不良(余命が短い)を示唆する皮膚転移として知られています。
メアリー・ジョセフは発見者である看護婦の名前です。
彼女はアメリカにある有名なメイヨー・クリニックの前身「聖マリア病院」の看護婦で、この臍変化がある患者の多くは胃癌で死亡することを報告したのです。
蛇足ながら、看護婦・病院の名前まで"Mary(Maria)"(メアリー(マリア))です。