民主党の医療政策 第12回

2010年8月1日

 

 先月の参議院選挙で民主党は大敗しましたが、政権を明け渡した訳ではありません。
民主党政権は継続しており、当欄でも来月まで民主党の医療政策についての検証を続けます。

8.「包括払い」制度の推進
 民主党は次のように公約しています。
①国内どこに住んでいても、医学的根拠に基づく医療(EBM(evidence based medicine))が受けられるよう、急性期病院において、より一層の「包括払い」制度(特定の疾患に定額の報酬が支払われる制度)の導入を推進する。
②後期高齢者医療制度でも「後期高齢者診療料」という「包括払いのような」制度が導入されているが、医療現場の理解を得られておらず、必要な検査ができなくなる恐れがあるので廃止する。

 診療報酬の算定方法には「出来高払い」と「包括(定額)払い」の2種類があります。
「出来高払い」とは細分化された一つ一つの診療行為ごとに報酬を設定し、それらを合算する算定方法です。検査、診断、治療等の診療行為には専門的な知識や技術を要するのは無論、危険を伴う事も多く、結果責任は全面的に医師が負わなくてはなりません。
従って、一つ一つの診療行為毎に報酬が設定され、経済的な裏打ちを持って適切に評価される「出来高払い」制度は、高度な専門性と責任を要求される医療には当然の報酬制度であると言えます。
 一方、「包括払い」とは、例えばいくつかの診療行為(投薬・検査・注射等)をまとめて定額の報酬を設定したり、特定の疾患にあらかじめ定額の報酬を設定 する算定方法です。定額の報酬の中により多くの診療行為を「マルメ」込んだり、定額の報酬額その物を減額すれば、簡単に診療報酬を安く押さえる事が可能で す。そのため、社会保障費削減政策を執った旧自公政府は、本来「出来高払い」であるべき診療報酬に、見境(みさかい)無くドンドンと「包括払い」を取り入 れてきました。その結果、様々な弊害が生じています。
例えば、必要な医療を提供しようにも、設定されている報酬が低いため採算割れを起こすため、投薬を断念したり、必要な検査が施行できない事態となっています。
そのため、疾病の悪化や誤診を招く危険が高まります。結局、そのツケは患者に回り、不幸な転帰をたどる事になります。「病院経営にもコスト意識が必要であ り、「包括払い」の報酬でも、無駄を省く組織努力によって必要な検査・治療は可能である」との意見もありますが、収支を改善させるためには支出の大部分を 占める検査・治療の経費を削らざるを得ず、粗診粗療を余儀なくされています。何と悲しい事でしょう。
「福祉大国日本」の名がすたります。
 民主党の公約①は、この不条理な「包括払い」制度を、よりによって急性期病院に導入するというのです。急性期医療では、患者に必要な医療を迅速に施す必要があります。
目の前の救急患者を治療しなければならない時に、コスト計算をしたり、採算を心配している暇はありません。急性期病院にこそ、「包括払い」ではなく「出来 高払い」が最も必要なのです。民主党の主張は明らかな間違いです。しかも、医学的根拠に基づく医療(EBM)と「包括払い」との間には何の関連もありませ ん。EBMが受けられるようにするために「包括払い」を導入する、という文には全く脈絡がないのです。民主党は、昨今の流行語とも言える「EBM」を無理 やり使ってみたかっただけとしか思えません。
 公約②で、民主党は後期高齢者医療制度に反対を表明しており、これ自体は「院長から一言(平成20年9月19日、平成22年2月1日)」で述べたように正しい主張です。
しかしながら、この中でやり玉に挙げている「後期高齢者診療料」は、月6,000円という低額で、何度でも、どんな病気も、1人の医師に治療させる、という最も許し難い「包括払い」制度です。「包括払いのような」制度ではなく、最悪の「包括払い」なのです。

 公約②で最悪の「包括払い」を廃止すると言っておきながら、公約①で「包括払い」を導入すると言うのは、明らかに矛盾しています。民主党の医療政策は、 現状の医療制度を正しく理解しないまま、付け焼き刃的に慌(あわ)ててこしらえたのではないかと疑わざるを得ません。
 
 医療政策だけではありません。民主党は「普天間基地は最低でも県外へ移転する」、「高速道路は原則無料化する」等の公約を完全に破棄してしまいました。 さらに「4年間は消費税を増税しない」と公約しておきながら、鳩山首相から菅首相に交代した途端に「消費税10%構想」をぶち上げ、参議院選挙が近付くと 今度は「議論を呼びかけただけだ」と後退してしまいました。そして、大敗した選挙後には、「唐突に消費税増税を持ち出したのが敗因」と泣き言を述べる始末 です。このように、民主党は選挙目当てに場当たり的な政策を乱発し、その挙げ句、実行不可能に陥り、右往左往する醜態をさらしています。
 私は医療の事しか判りませんが、民主党は、少なくとも医療政策に関する限り、はなはだ勉強不足です。日本医師会等の医療現場で働く人達の意見に真摯に耳を傾け、大いに学習して、首尾一貫した正しい医療政策を行ってもらいたいものです。

インフルエンザ予防接種の予診票は当院受付にてお配りしている他、本サイトからもダウンロードできます。予め記入後お持ち下さい。

  ただし、「65歳以上の藤沢市民」は、当院にて専用の予診票に記入して頂きますので、ダウンロードは不要です。

お知らせ

令和6年4月以降、発熱など風邪症状がある方も、電話連絡等は不要となりました。

令和6年3月14日(木)、21日(木)、28日(木)の各木曜日休診します。

4月以降も、毎週木曜日休診します。

3月7日(木)臨時休診します。

2月28日(水)から3月5日(火)まで臨時休診します。3月6日(水)から診療再開します。

令和6年4月より、毎週木曜日、休診します。

1月25日(木)は通常通り診療します。

2月1日(木)は急用のため、休診いたします。

急用のため、1月18日(木)休診いたします。

 

急用のため、1月11日(木)休診いたします。

 

令和5年12月29日より翌1月3日まで休診します。ただし、1月2日は藤沢市休日当番医のため、午前9時から午後5時まで、急病・外傷患者さんの診療を行います。

8/11(金)から8/17(木)まで夏期休診させて頂きます。

新型コロナワクチンの3回目接種を来年1月18日から開始します。

市から接種券が届いたら、電話にて予約して下さい。藤沢市以外の方も予約できます。

TEL 0466-31-0840