民主党の医療政策 第6回

2010年2月1日

5.医療従事者の職能拡大と定員増
 
 民主党は次のように公約しています。
①薬剤師、理学療法士、臨床検査技師等のコメディカルスタッフの職能拡大と増員を図り、医療提供体制を充実させ、医療事故防止、患者とのコミュニケーション向上につなげる。
②病院勤務医が診療のみならず、診断書や意見書、紹介状の作成等の事務手続きをしなければならない事により、医師不足に拍車がかかっているため、医師の事務を分担する医療事務員(医療クラーク)の導入を支援する。
③専門的な臨床教育を受けた看護師の業務範囲を拡大し、医療行為の一部を分担させる。
 これら3つの政策は、いずれも、医師数が十分に増加するまでには長い年月を要するため、「医療崩壊」を治療する次善の策として考案されたと思います。
それぞれの政策について、順に私の意見を述べます。


 ①については全面的に賛成です。
医師の負担を軽減し、医療事故防止等につながる事が期待できます。

 ②についても、方向は正しいと思いますが、対象が病院勤務医に限定されている点が気に入りません。診断書や意見書、紹介状の作成等の事務手続きに忙殺されているのは、診療所も同様です。私自身、毎日、最低10-20通前後はこれらの書類を書いています。
これだけで、毎日1-2時間を費やしています。「2.地域医療を守る医療機関を維持」の項でも述べましたが、民主党の医療政策は病院勤務医に偏重しています。
病院だけではなく診療所にも、医療クラークの導入を支援するための報酬を付けてもらいたいものです。病院勤務医に限定した政策は、片手落ちの感をぬぐえません。

 ③については、反対です。到底、容認できません。
「医療行為の一部を分担」する「専門的な臨床教育を受けた看護師」とは、「ナースプラクティショナー(NP)」を指していると思われます。
大分県立看護科学大学が、一昨年(2008年)、NP養成の修士コースを開講した事がNHKの番組「クローズアップ現代」でも取りあげられたので、ご存じの方も多いでしょう。
 そもそも、NPが政策に取り入れられたのは、昨年(2009年)3月閣議決定された「規制改革推進のための3か年計画」が最初です。この中で、「専門性 を高めた新しい職種(慢性的な疾患・軽度な疾患については、看護師が処置・処方・投薬ができる、いわゆるナースプラクティショナーなど)の導入について、 各医療機関等の要望や実態等を踏まえ、その必要性を含め検討する」と書かれています。御多分に洩れず、長ったらしい役人言葉で理解しにくい文ですが、要す るに、医者が足りないから看護師にその代わりをやらせよう、という事です。何と浅はかな考えでしょうか!あきれて物が言えません。
 高名な医師の中にも、米国でNPが貴重な新戦力として活躍しチーム医療の一翼を担(にな)っているという観点から、我が国へのNP導入を歓迎する方もいます。
しかし、現在の日本でも、医師は看護師や他のコメディカルスタッフと共にチーム医療を行っています。そもそも、米国と日本では、医療事情が全く異なるのです。
 米国ではプライマリケア医(初期診療を行う医師)は外科医などに比べて収入が半分以下で、1998年以降の8年間でプライマリケア医を目指す医学生は 51%も減少したそうです。プライマリケア医の数は著しく不足し、保健医療の危機が叫ばれる中、編み出された資格がNPでした。医師が施すのと同じ治療を NPが施した場合も、医療機関には医師診療報酬の85-100%が支払われました。一方、医療機関がNPに支払う給料はプライマリケア医の半分で済みまし た。その結果、医師の代わりにNPを雇って診療させた医療機関は莫大な利益を得るようになり、瞬(またた)く間に全米にNPが普及したのです。
NPは医師に比べ給料が安いだけでなく、その育成にかかる教育費も安く、教育期間も短いため、実働できる医療者を早く低コストで確保する事が可能になりま した。今や、無医村・スラム街・アメリカ原住民(インディアン)居住区では、NPは無くてはならない存在です。また、米国には健康保険に加入していない人 々が5,000万人もいますが、これら無保険者達にとってNPを雇った地域診療所は駆け込み寺となっています。
 一方、日本では、医師の給与が米国のように莫大ではないため、医師の代わりにNPに診療をさせても人件費抑制効果はあまり見込めません。また、日本国民の多くは、米国人とは異なり、所得の高低にかかわらず同じ質の医療を受ける事を望んでいます。
医師ではないNPの診察・治療を自(みずか)ら希望する人は日本では少ないでしょう。
第一、医師の資格は高度な医学的判断・医療技術を担保するために与えられるものであり、診察・治療・処方等はこの資格を有する者だけに許された行為です。
看護師にこの様な行為をやらせたければ、医師の資格を取らせれば良いだけの話です。
 そもそも、患者に対する医療行為の責任を全面的に医師に被(かぶ)せているのが現状の法制度の下で、NPが行った診断・治療に対して、一体誰が責任を負うのでしょうか?
医師が不足しているから看護師にその代わりをやらせようとは、全く笑止千万です。
私は、決して、医師に比べて看護師が劣ると言っているのではありません。また、医師が全てを仕切らなければならないとも思いません。医師の既得権に固執しているのでもありません。医師、看護師、その他あらゆる医療職には各々(それぞれ)の役割分担があるのです。
「医師不足」を理由に他職種に医師の仕事をさせるのではなく、医師が働きがいのある労働環境や報酬を保証し、医療現場に医師を回帰させ、増やさなくてはいけないのです。
民主党は、小泉「構造改革」が日本の国民皆保険制度を破壊するために行った「規制緩和」を踏襲するという愚を決して犯してはなりません。

インフルエンザ予防接種の予診票は当院受付にてお配りしている他、本サイトからもダウンロードできます。予め記入後お持ち下さい。

  ただし、「65歳以上の藤沢市民」は、当院にて専用の予診票に記入して頂きますので、ダウンロードは不要です。

お知らせ

令和6年4月以降、発熱など風邪症状がある方も、電話連絡等は不要となりました。

令和6年3月14日(木)、21日(木)、28日(木)の各木曜日休診します。

4月以降も、毎週木曜日休診します。

3月7日(木)臨時休診します。

2月28日(水)から3月5日(火)まで臨時休診します。3月6日(水)から診療再開します。

令和6年4月より、毎週木曜日、休診します。

1月25日(木)は通常通り診療します。

2月1日(木)は急用のため、休診いたします。

急用のため、1月18日(木)休診いたします。

 

急用のため、1月11日(木)休診いたします。

 

令和5年12月29日より翌1月3日まで休診します。ただし、1月2日は藤沢市休日当番医のため、午前9時から午後5時まで、急病・外傷患者さんの診療を行います。

8/11(金)から8/17(木)まで夏期休診させて頂きます。

新型コロナワクチンの3回目接種を来年1月18日から開始します。

市から接種券が届いたら、電話にて予約して下さい。藤沢市以外の方も予約できます。

TEL 0466-31-0840