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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
令和8年2月1日
トレヴィの泉Fontana di Trevi
ローマに来た観光客のほとんどが訪れる名所です。
treviは「三叉路」という意味で、泉の前から3本の道が延びているのが由来です。
「コインを肩越しに泉に投げると、再びローマに来られる」という言い伝えは有名です。
この泉が完成するまでには、紆余曲折がありました。
帝政ローマ時代、周囲の山からはるばる引いてきた水道の末端に、工夫を凝らした泉を造るのが習わしでした。
見事な噴水から勢いよくあふれる水は、資金を出した裕福な人々や工事に携わった関係者の、名誉と誇りの印でもありました。
トレヴィの泉も、紀元前19年、アウグストゥス帝の婿養子アグリッパが造らせた水道に遡(さかのぼ)ります。
水道は20kmに亘って水を運び、「アクア・ヴェルジネ(処女の水)」と呼ばれていました。
最初のトレヴィの泉は、樋から落ちる水を3つの水盤で受ける物でした。
これは、ローマの各所にあった泉や噴水と同様、蛮族の侵入で破壊されてしまいました。
15世紀以降、約300年に亘り、13代の法王が泉の再建に関わりました。
18世紀、法王クレメンス12世の命により建築家ニコラ・サルヴィが30年かかって、現在の姿を完成させたのです。
建築と彫刻と水が一体になった、バロック芸術の傑作です。
ポーリ宮殿を背景に、3体の立派な彫刻が立っています。
中央が、ギリシャ神話の「海と地震の神ポセイドン」(ローマ神話ではネプチューン)です。オリンポス12神の一人で、最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇ります。
海洋の全てを支配し、全大陸さえも支えています。
怒り狂うと、強大な地震を引き起こして世界を激しく揺さぶります。
また、泉の守護神でもありますので、トレヴィの泉の中央に立つのです。
ポセイドンの左に立つのが、ギリシャ神話の「大地・穀物・豊饒の女神デーメーテール」(ローマ神話ではケレスCeres)です。
デーメーテールの別名をクロエーChloeといいます。
Chloeが穀物の女神の別名にされたのは、元々「緑」という意味だからです。
chlorophyll(クロロフィル、葉緑素)などの英単語もこれから派生しています。
穀物の女神デーメーテールのローマ神話における名前ケレスCeresから英語のcereal(シリアル、穀物)が生まれました。
ポセイドンの右に立つのが、ギリシャ神話の「健康の女神ヒュギエイア」です。
彼女は医神アスクレピオスの娘で、医学の象徴である蛇(へび)の飼育係です。
右手に持っている「ヒュギエイアの杯」は薬学の象徴です。
ヒュギエイアについては、令和4年10月1日号や令和6年10月1日号(共にフィレンツェ編)で詳しく紹介しましたので、ご覧下さい。
次号に続く