医学の歴史を訪ねて 第60回 ローマ編 その5

令和7年10月1日

 

フォロ・ロマーノForo Romano(続き)

 フォロ・ロマーノは全体的に道路面よりかなり低くなっています。

それもその筈(はず)、前号で述べたように、ここは古代ローマ時代に丘と丘の間の沼地を干拓して造られた広場だからです。

 市民の集会や裁判、商業活動や政治討論の場として設けられた「公共広場forum」であり、買い物広場でもありました。

古代ローマの発展の中核だった訳です。

ちなみに、現代英語のforum(フォーラム)は、もっぱら「公開討論会」の意味で用いられています。

 紀元前5世紀の共和政時代初期には、フォロ・ロマーノは市民の公共生活の中心となり、ローマの発展と共に繁栄していきました。

 しかし、やがて帝政が敷かれて、諸皇帝の広場ができると、フォロ・ロマーノはその本来の役割(民主政治の中心)を失い、むしろローマの偉大さと栄光を示すシンボルに変わっていきました。

 その後、たび重なる蛮族の侵入で破壊されたフォロ・ロマーノは、中世には放牧の原となり、残った遺跡は壊され、建築材料として持ち去られました。

19世紀になって考古学的な発掘が行われるまで、かつてここに偉大なローマの中心があったことさえ、忘れ去られていたのです。

 

 フォロ・ロマーノの一番西の奥に「セヴェルス帝の凱旋門」が建っています。

その左脇には、「ローマの臍(へそ)"Umbilicus  Urbis"と呼ばれる、直径4mのレンガでできた円があり、文字通りローマの中心でした。

 そして、セヴェルス帝の凱旋門のすぐ左下にある細長い台座が、ロストリ"Rostri"と呼ばれる演壇です。

紀元前1世紀にカエサル(ジュリアス・シーザー)が行ったフォロ・ロマーノの改修で、現在の場所に移されました。

高さ約3m、長さ12mの凝灰岩でできています。

ここで、キケロなどの雄弁家が、広場に集まった市民に向かって弁を振るいました。

 ローマ時代には、公職を志願する候補者は、自らの清廉潔白を示すために、トーガ"toga"(布を緩やかに体に巻き付ける衣服)をチョークで白く塗り、人々の支援を求めて、この演壇で演説したり、町を歩き回ったりしました。

白衣を着ている人は一点の汚(けが)れもないことを示し、公職にふさわしいと訴えたのです。

 白衣を着ている候補者を、当時candidatus(カンディダートゥス)と呼びました。

その元はラテン語のcandere(カンデーレ、白く輝く)です。

現代英語でも、候補者・志願者をcandidate(キャンディデイト)といいます。

candle(ローソク)、chandelier (シャンデリア)、オランダ語 kandelaar(カンテラ、携帯用の石油灯)など、すべて同じ語源に由来します。確かに、みんな「白く輝き」ますね。

 さて、医学用語にもCandida (カンジダ)というカビの名前があります。

これも、このカビが乳白色で光沢のある塊(かたまり)を作るからです。

ちなみに、Candida albicans(白色カンジダ)という種類がありますが、直訳すると「白く輝く白い物」です。

いくら白いにしても、おかしな名前です。     

 

                                                                 次号に続く

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お知らせ

8月10日(日)から15日(金)まで夏期休業いたします。

院長から一言を更新しました(令和7年6月1日)。

医学の歴史を訪ねて 第56回 ローマ編 その1

12月29日(日)から1月3日(金)まで休診します。

8月13日(火)、14日(水)、15日(木)の3日間、夏期休診させて頂きます。

Message from the Directorを更新しました(Jul 1, 2024)。 

令和6年4月以降、発熱など風邪症状がある方も、電話連絡等は不要となりました。

令和6年3月14日(木)、21日(木)、28日(木)の各木曜日休診します。

4月以降も、毎週木曜日休診します。

3月7日(木)臨時休診します。

2月28日(水)から3月5日(火)まで臨時休診します。3月6日(水)から診療再開します。