令和3年6月1日
大運河
(Canal Grandeカナル・グランデ、英語ではGrand Canalグランド・カナル)
サンタ・ルチア駅からサン・マルコ広場まで全長3,800mの、"S"の字を左右反転した形に蛇行する運河です。
「世界で最も美しい道」とも讃(たた)えられる水路です。
運河沿いには、13~18世紀に建てられた貴族たちの豪華な館(やかた)が建ち並びます。
当時、パドヴァ大学にいたガリレオ・ガリレイが議論した友人サグレードの館も、その一つです。
ガリレオ・ガリレイはこの議論を元に、17世紀に「天文対話」(プトレマイオスとコペルニクスの宇宙体系についての話)を著(あらわ)しました。
Canal Grandeのcanalは、ラテン語のcanna、ギリシャ語のkannaで、「葦(あし)」や「よし」を表します。
これらの茎(くき)は管(くだ)になっていて、水を通すチューブや笛(ふえ)などとして使われ、各国で色々な意味の言葉になりました。
英語では、canal(管、運河)、canyon (峡谷)、Grand Canyon(グランドキャニオン、大峡谷)、cannon (大砲)、音楽のcanon(カノン、追復(ついふく)曲)、channelなどです。
音楽のcanon(カノン)とcanna(葦)は、どう結びつくのでしょうか?
古代ギリシャでは、葦cannaが長さを測る棹(さお)として用いられました。
計量した結果は正確であるため、戒律、規則、法律、標準、厳密、経典(きょうてん)などを意味するcanonという言葉が生まれました。
そして、音楽においても、先行句を厳密に模倣(もほう)しながら組み立てられる追復曲をcanon(カノン)と呼ぶようになったのです。
カメラ・コピー機メーカーのCanon(キヤノン)も同様です。
「標準」「厳密」という意味のcanonが正確第一の精密工業の名にふさわしく、しかも会社創立時に盛業を願った「観音(かんのん)」様に発音が似ている事から、この名称になったのだそうです。
医学用語でも、inguinal canal (鼡径管)、alimentary canal (消化管)、recanalization (再開通)などと使われます。
南米の楽器(縦笛(たてぶえ))ケーナ(quena)も昔はcanna(葦)から作られたから、こう呼ばれるのだそうです。
現在は、竹や木から作られます。
ドイツ語でも、細長い管をカニューレと言います。
鼻から胃に入れる管や、点滴や人工呼吸に用いる管は、どれもカニューレと呼びます。
南フランスのカンヌ(Cannes)は、昔は葦が一面に生い茂る沼地だったから、この名になったのだそうです。
今では、毎年カンヌ国際映画祭が開催される保養地として、世界的に有名ですね。
次号に続く