令和2年8月1日
前号で、2015年4月に介護保険制度の「4大改悪」が強行されたと述べました。
しかし、これは第1段階に過ぎません。
10年後の2025年に向けて、介護保険の改悪はどんどんエスカレートしていくのです。
2015年6月閣議決定された「経済財政運営の基本方針(骨太の方針2015)」では、社会保障費の自然増を3年間で9,000億~1兆5,000億円も削減する事を目安にしています。
さらに、2025年までに医療・介護費を計5兆円も抑制する方針まで掲(かか)げています。
まだ、他にもあります。
「骨太の方針2015」は、要介護1・2(要支援1・2ではありません)の利用者に対するサービスを「見直し」、市町村事業への移行を検討する事を明記しているのです。
2015年4月の介護保険制度「4大改悪」で、要支援1・2の人に対するサービスを切り捨て、市町村に丸投げしたばかりなのにです。
「要支援1・2の人に対するサービス費は介護給付費の6%に過ぎず、これを切り捨てても支出抑制効果は知れている。それに比べ、要介護1・2の人達へのサービスを打ち切れば給付費を30%もカットできる。次のターゲットは要介護1・2だ」という訳です。
2015年12月に、政府の経済財政諮問会議が決定した「経済・財政再生計画 工程表」には、今後の改悪案の内容が全て盛り込まれました。
2017年の通常国会で「法改正」し、2020年に完成という工程です。
このまま安倍政権の経済財政改革という名の暴走が続けば、2020年の今年には、介護保険制度が次のような姿になってしまいます。
幸い、新型コロナウィルス騒動のお蔭で、まだ実現には至っていませんが・・・。
①介護保険サービスの大部分は要介護3・4・5の人しか受けられない。
要支援1・2、要介護1・2の人への介護は市町村に丸投げする。
②生活援助・福祉用具・住宅改修は、介護保険で給付せず、全額自己負担させ る。
③全ての年齢において、自己負担を2割にする。
④マイナンバー制度により国民の預貯金を把握し、一定額以上の人には3割負担を 課す。
まさに「新4大改悪」というべきものです。
医療保険制度においても、国は自己負担増、診療報酬削減の政策を執(と)り続けています。
在宅医療の分野でも診療報酬削減の嵐が吹きまくっています。
政府は今後、医師の役割を看護職員に、看護職員の役割を介護職員に、介護職員の役割を家族・住民同士の助け合いやボランティアに、シフトさせることを目論(もくろ)んでいます。
国は退院患者の受け入れ体制を脆弱(ぜいじゃく)にしておいて、「川上」でのベッド数削減と入院日数の短縮を強引に進めています。
「川下」に流される患者は医療も介護も受けられません。
「受け皿」であれば、必要な医療・介護を公的に保障する手立てを講じなければならないのに、国はそのようなことを一切考えてはいません。
国が考える「地域包括ケアシステム」は、公的な医療・介護保障システムではなく、あくまで「自助・互助」を中心とした受け皿作りなのです。
しかも、そのネットワーク作りは自分たちで勝手にやりなさい、と突き放しているのです。
2013年12月に成立した「社会保障改革プログラム法」には「公助」の文言はなく、「自助・自立のための環境整備(第2条)、個人の健康管理・疾病(しっぺい)予防の自助努力(第4条)、介護予防の自助努力(第5条)等々、「自助」ばかりを強調しています。
また、「多様な主体」による保険事業推進、「多様な主体」による高齢者の自立支援など、「多様な主体」ばかりを主張しています。
つまり、国の責任を放棄し、患者・利用者に自己責任を押し付け、自治体の自己努力に委(ゆだ)ねているのです。
「川上」でも「川下」でも、目指しているのは医療・介護の給付抑制だけです。
次号に続く