令和2年7月1日
本稿第3回で述べたように、政府肝(きも)入りの「社会保障制度改革国民会議」が2013年8月に「報告書」を発表しました。
この中で構想された「川上」の改革が、入院医療費を抑制するための「入院患者追い出し」政策です。
そのために、「地域医療構想」という曖昧(あいまい)な名称の政策により、病院のベッド数削減と在院日数短縮が都道府県に義務付けられました。
早期退院を促された患者は、医療・介護などの療養の必要性を負ったまま在宅に戻されてしまいます。
その受け皿作りが「川下」の改革であり、各自治体に「地域包括ケアシステム」を構築せよという訳です。
しかしながら、地域における医療・介護体制は充実するどころか、保険料や窓口負担の引き上げにより荒廃する一方です。
その結果、孤独死、老老介護、認認介護による生活困難が増大し、医療・介護難民が増加しています。
家族介護は減るどころか増えており、介護は家族が支えている、というのが日本の実態です。
これは、介護保険制度が家族介護を前提としているためです。
今後も増え続ける独居や老老介護に対応するには、介護保険制度の改善が是非とも必要なのです。
ところが、2014年6月に成立した「医療介護総合確保促進法」に基づいて、2015年4月から介護保険制度「改革」が始まりました。
具体的な中身を見てみましょう。
以前の介護保険は、
①要支援1(要支援1・2、要介護1・2・3・4・5の7段階に分類された介護認定基準の中で最も軽い)からでも在宅サービスは使える。
②要介護1以上であれば特別養護老人ホームに入所申し込みをして待つ事ができる。
③介護サービス利用料は所得に関係なく1割負担。
④低所得者は介護保険施設の部屋代・食事代を一部免除される。
という4つの特徴がありました。
けれども、2015年4月の介護保険制度「改革」では、これらを全て悪く変える「4大改悪」が強行されたのです。
それは、以下の4つです。
①要支援1・2の利用者に行う訪問介護(ホームヘルパー)と通所介護(デイサービス)は保険から外し、市町村が基準・報酬・負担割合を独自に決める「総合事業」へ移管する。つまり、国から市町村への丸投げです。
②特別養護老人ホームへの入所は要介護3・4・5の認定を受けた人だけに限定する。つまり、要介護1・2の人を特別養護老人ホームから締め出す。
③年収160万円以上の利用者は利用料2割負担に値上げする。
④低所得者でも1,000万円以上の貯金があれば、介護保険施設の部屋代・食事代の援助を打ち切る。
次号に続く