令和2年6月1日
本稿第2回で述べたように、2013年12月に成立した「社会保障改革プログラム法」で、「地域包括ケアシステム」が初めて法的に定義されました。
これに先立つこと5年前の2008年から2年間にわたり、地域包括ケアシステムの基盤を考察するため、「地域包括ケア研究会」が政府の肝(きも)入りで開催されました。
この研究会の報告書には、次のように書かれています。
地域包括ケアシステムの提供に当たっては、それぞれの地域が持つ「自助・互助・共助・公助」の役割分担を踏まえた上で、自助を基本としながら互助・共助・公助の順で取り組んでいくことが必要である。
自助:自ら働いて、または自らの年金収入などにより、自らの生活を支える事。
自分の健康は自分で維持する事。
互助:非制度的な相互扶助。例えば、近隣の助け合いやボランティアなど。
共助:社会保険のような制度化された相互扶助。
公助:自助・互助・共助では対応できない困窮などの状況に対し、所得や生
活水準・家庭状況などの受給要件を定めた上で、必要な生活保障を行う
社会福祉など。
そもそも、日本国憲法 第二十五条には
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
と書かれています。
憲法は、社会保障に対して責任を持つことを、国に義務付けているのです。
ところが、「地域包括ケア研究会」の報告書を見てわかるように、政府は社会保障を「自助・互助・共助・公助」に無理やり分割した上で、「公助」を生活保護費支給に限るとしたのです。
そして、「自助」という名のもとに、国民に生活全般に及ぶ自己責任と経済的自己負担を押し付けたのです。
つまり、政府は社会保障の理念「普遍的な公的保障の拡大」を放棄した訳です。
「自助・互助・共助・公助」などという、摩訶(まか)不思議な言葉を持ち出してきて、社会保障理念を勝手にすり替えることは到底許されません。
社会保障は、個人の尊重を基本に、生存権と市民生活を保障する公共性を有します。
「自助・互助・共助・公助」なんぞ、社会保障理念にはなり得ません。
次号に続く