令和2年3月1日
地域包括ケアシステムは、今や「国策」とも言われるようになっています。
地域包括ケアシステムについての講演やシンポジウムは花盛りで、私も何回か聴講しました。
登壇する講師たちは、みんな口を揃(そろ)えて、 地域包括ケアシステムの理念を「とうとう」と語ります。
私を含め、聞いている人たちの多くは、こう思います。
「国は自治体と協力して、社会保障として、医療・介護・福祉サービスを包括的に提供してくれるのだ。
だから、私たちは、病気や障害があっても、尊厳ある人生を地域社会の中で送ることができるのだ。
そして、今住んでいる所で、自分らしい最期を迎えられるのだ」
ところが、実際はそうではありません。
政府は、「地域包括ケアシステム」の名のもとに、病気の治療や介護への対応を個人に責任転嫁しようとしています。
そうすることにより、国や企業の医療・介護への支出を削減しようとしているのです。
そして、医療・介護を営利市場(ビジネスチャンス拡大の場)にしようと狙(ねら)っているのです。
国が提唱する「地域包括ケアシステム」が、いかに欺瞞に満ちた政策であるかを分かり易く説明し、皆さんに理解して頂くことが本稿の目的です。
2013年12月に成立した「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(略して「社会保障改革プログラム法」)で、地域包括ケアシステムが初めて法的に定義されました。
「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療・介護・介護予防(要介護状態もしくは要支援状態となることの予防、または、要介護状態もしくは要支援状態の軽減もしくは悪化の防止)・住まい・自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」
何と長くて、わかりにくい定義でしょう!
私は、この長い定義の4行目まで読んでいる間に、1行目に書いてある内容を忘れてしまい、何度読んでも理解できません。
さらに、2014年6月に成立した「地域における医療および介護の総合的な確保の促進に関する法律」(略して「医療介護総合確保促進法」)は、
第一条(目的)で、「地域において効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築する」ことを明記しました。
また、第二条で、社会保障改革プログラム法で定めた地域包括ケアシステムの定義を再掲しました。
こうして、2013・2014年の法改正により、「地域包括ケアシステム」が安倍政権における「医療と介護の一体改革」の中心的な柱となったのです。
次号に続く