令和2年1月1日
明けましておめでとうございます。
今年も積極的に発言しますので、お付き合い下さい。
前々号、前号に続き、精神医学の分野における疾患や症状に付す病名・呼称について、私見を述べます。
2.認知症についてのお話を続けます。
お年寄りが呆(ぼ)けたからといって慌(あわ)てる必要はないのです。
子供に戻っただけのことです。
ところが、認知症を病気として理解しよう、という風潮が広がり、種々の「抗認知症薬」が開発されています。
当院にも製薬会社の営業マンがしつこいくらいに「抗認知症薬」を売り込みに来ます。
私は彼らに尋ねます。
「この薬を飲むと認知症が治るの?」
彼らは必ずこう答えます。
「治りはしませんが、進行を食い止める事はできます」
けれども、残念ながら私の経験では、これらの薬を使って「認知症の進行を食い止めた」という実感は一度もありません。
人権や尊厳といった大義名分のために「痴呆」や「呆け」という古き良き日本語を追放してしまった結果、どうなったでしょうか?
人間らしく年相応に呆けていたお年寄りまでも、全員「認知症」という病気にされてしまったのではないでしょうか?
こんなことを言う私は医師として失格なのかも知れません。
町医者ですから「認知症」の人を大勢診ています。
薬も処方しています。
でも、「痴呆」や「呆け」という言葉を失いたくありません。
心からそう思います。
3.知的発達障害
かつては関係法令において「精神薄弱(精神遅滞)」という用語が使われていました。
私が学生時代に学んだ「最新精神医学-精神科臨床の基本-」にもこの病名が載っています。
そして、「医療の対象とはならない」と書かれているのです!
その後「薄弱」や「遅滞」は差別的な表現だと批判されるようになり、2013年以降、「知的能力障害」「知的発達障害」という用語に変更されたそうです。
2015年発刊の「標準精神医学 第6版」には驚くべき記述があります。
抜粋します。
「発達障害者と健常者との間に明確な境界を引く事ができるのかどうか議論のあるところである。健常者とされている(と本人は思っている)人の中にも、発達障害の特性が見られることは少なくない。発達障害特性を全く持たない人はいない」
どうです?皆さん。あなたも私も発達障害なんですって!
確かに、昔のことを懐かしんでばかりいる、石頭(いしあたま)の私は発達障害なのでしょう。
4.性同一性障害
性同一性障害とはLGBT(Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者、生まれ持った性別と心の性が一致しないことから反対の性で生きようとする人))の一部を指すのだそうです。
そして、LGBTを性的「少数派」(セクシュアル マイノリティー)と呼ぶそうです。
この分野に関しては、私は「多数派」に属します。
平成27年(2015年)、東京都渋谷区で、女性同士のカップルが「結婚に相当する関係」と条例で認められるなど、LGBTが話題になりました。
私は、渋谷区の条例を含め、LGBTに関しては理解不能です。
申し訳ありません。
その他、「標準精神医学 第6版」には、性的方向付け障害(同性愛)、性嗜好(しこう)障害(パラフィリア)、フェティシズム、露出症、窃視(せっし)症、小児性愛、サディズム(加虐性愛)、マゾヒズム(被虐性愛)、死体愛好症、糞尿愛好症などの疾患について、6ページに亘り詳細に(大まじめに)記載されています。
ちなみに、性嗜好障害(パラフィリア)とは「性的倒錯」とも呼ばれ、常識的な性道徳や社会通念から逸脱した性的嗜好を指すそうです。
また、フェティシズムとは異性の体の一部や、身に着けたものなどに異常な執着を示し、それによって性的満足を得ることだそうです。
さらに、窃視症とは異常性欲の一つで、異性の裸体や性行為などをのぞき見ることによって性的満足を得ることだそうです。
いずれも、私の守備範囲を遥(はる)かに超えていますが、立派な精神疾患のようです。
ちなみに、これより36年前に書かれた教科書「最新精神医学-精神科臨床の基本-」にはどう書かれているのか、調べてみました。すると、ほんの少しだけありました!
「性倒錯」という項目に、「性欲対象の異常」「性的満足行為の異常」の2つについて、合計で僅(わず)か半ページだけ記されています。
私の感覚ではその程度で充分です、と言ったら少数派の人達に叱られるでしょうか?
私の頭は36年間進歩していないようです。
以上で、病名や呼称についての考察を終わります。
1年間お付き合い頂き、ありがとうございました。