平成30年10月1日
今回から、個人情報保護に対する過剰反応について、私見を述べます。
過日、以下のような事件が起きました。
当院に不定期に通院している患者さん(大学生)に処方した薬について、本人に至急連絡しなければならない用件が発生しました。
当院事務員が本人の携帯電話に何度か電話しましたが、応答がありません。
大学生はアパートに一人暮らしで、実家の連絡先は不明です。
そこで、事務員がアパートを何度か訪ねましたが、いつも不在です。
仕方なく、本人が通う大学に電話しました。
治療に関する内容なので、伝言をお願いする訳にはいかず、本人を電話口まで呼び出して下さいとお願いしました。
応対した大学職員は当院の依頼には応じてくれず、当院から電話があった旨を本人に伝えるとの返答でした。
数日経っても本人から電話が来ないため、当院事務員がアパートを再度訪ね、メモ書きを郵便受けに入れましたが、やはり本人からの連絡がありません。
そこで、再度大学に電話し、本人に伝言してくれたのかどうかを尋ねたところ、驚くべき返事が返ってきました。
「伝言したかどうかは、本人が登校したか否かに関する個人情報であるから、教えられない」と言うのです。
「治療薬に関する緊急の連絡だから、本人を呼び出して欲しい」と再度頼みましたが、「今日登校しているかどうかの個人情報を教える事になるので、呼び出しはしない」と断られてしまいました。
結局、帰省から戻った本人がメモ書きを見て、当院を受診してくれたため、事なきを得ました。
私は、この大学の応対に憤(いきどお)りを覚えました。
個人情報保護を理由に、医療機関からの電話を本人につながないのは、間違っていると思うのです。
「個人情報の保護に関する法律(「個人情報保護法」といいます。以下、本法と略します)」は、平成15年5月に公布され、平成17年4月に全面施行されました。
この法律の目的は、「個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利・利益を保護する(本法第一条)」事にあります。
しかし、本法の施行以後、この目的に反して、必要以上に個人情報の提供を控える事例が多発しています。
本来の趣旨とは異なる不必要な対応という意味で「過剰反応」と呼ばれています。
冒頭の大学の対応は、まさしく個人情報への過剰反応です。
次号に続く