平成30年9月1日
禁煙を勧めると、「電子タバコに替えたんだから良いでしょ?」と開き直る患者さんが増えてきました。
そこで、いわゆる「新型タバコ」について、私の見解を述べます。
従来のタバコ(燃焼式タバコ)とは異なる「新型タバコ」には、「電子タバコ」と「加熱式タバコ」の2種類があります。
「電子タバコ」とは、液体を加熱してエアロゾル(固体または液体の微粒子が気体中に浮遊している状態)を発生させる製品です。
液体にはニコチンを含む物と含まない物とがありますが、そもそもニコチンを含まなければニコチン中毒患者を満足させられません。
ところが、液体のニコチン(猛毒!)を含む製品は、日本の法律では販売が禁止されています。
つまり、日本国内で喫煙者が「電子タバコ」を吸う事はできない訳です。
「加熱式タバコ」には、葉タバコを直接加熱(蒸し焼き)し、ニコチンを含むエアロゾルを発生する製品(「アイコス」「グロー」など)と、エアロゾルを発生させた後にタバコ粉末を通過させる製品(プルーム・テックなど)があります。
日本の喫煙者が「電子タバコ」と呼んでいる物は、厳密には「加熱式タバコ」なのです。
ニコチン中毒患者を満足させなければなりませんから、加熱によって発生するニコチンの量は従来の燃焼式タバコと同等です。
「アイコス」を生産・販売しているフィリップ・モリス・インターナショナル社は「アイコスを通じて禁煙できる」などと宣伝していますが、欺(だま)されてはいけません。
ニコチン中毒患者が従来のタバコと同等のニコチンを摂取し、ニコチンを買い続ける事が会社存続の必要条件だからです。
有害物質である一酸化炭素やタール(煙の中の粒子成分)は、タバコの葉が燃焼する事によって生じます。
これらの毒は、加熱では比較的少量しか発生しません。
しかしながら、ニッケル・クロムなどの重金属や放射性元素のポロニウム、ニトロサミン・ベンゾピレンなどの発癌物質、さらにはプロピレングリコール、ホルムアルデヒド、アクロレイン、アセナフテンなど数え切れないほどの有害物質が、加熱式タバコでも従来のタバコと同程度発生することが分かっています。
「グロー」を生産・販売しているブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)社は「ハームリダクション " harm reduction "(危害を減ずる)が会社のポリシーだ」と強弁しています。
皆さんは、「大部分の毒は今まで通りだけど、一部の毒は減らしたよ」と言いながら渡された毒薬を飲みますか?
BAT社の「ハームリダクション」なんぞ、欺瞞(ぎまん)なのです。
「危険が少ない」という宣伝文句に乗せられて加熱式タバコを買う喫煙者は、もともとタバコの害を認識している訳です。
禁煙の入口に立っているとさえ言えます。
加熱式タバコを吸っているアナタ!
今すぐ、当院の禁煙外来を受診して下さい。
タバコの葉を燃やしませんから、加熱式タバコでは副流煙はほとんど発生しません。
しかしながら、人が吸い込んだ空気の3分の1はそのまま吐き出されます。
なぜなら、人の呼吸には口腔・鼻腔・気管など、酸素交換には与(あずか)らない「死腔」が介在するからです。
従って、加熱式タバコから吸入したエアロゾルやPM2.5と呼ばれる微小粒子状物質の3割以上が喫煙者の周囲に飛散します。
JT(日本たばこ産業株式会社)は「加熱式タバコは空気環境への影響がない」と宣伝していますが、大嘘なのです。
東京オリンピックを控え、受動喫煙防止対策が急務になっています。
「店内禁煙」を謳(うた)っていても「紙巻きタバコは不可だが、加熱式タバコは可」などという飲食店があります。
この店の経営者はタバコ会社の嘘を信じ、とんでもない誤解をしているのです。
前号で、私は「受動喫煙防止法」を制定すべきだと述べました。
現在、政府が議論している受動喫煙防止対策に新型タバコは含まれていません。
国の政策が、商魂たくましいタバコ会社の戦略に追いついていないのです。
是非とも、新型タバコを含めた「タバコ廃止法」の実現が必要です。
日本からタバコも新型タバコも、すべて追い出さなければなりません。
以上で、計18回にわたるタバコ追放論を終わります。
次回から、個人情報保護について私の考えを述べます。