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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
平成30年8月1日
日本たばこ産業株式会社(JT)の前身は専売公社です。
明治の初期、タバコ事業は民営でした。
しかし、富国強兵(ふこくきょうへい)政策の下(もと)、当時の政府は、財源を捻出する手段としてタバコ事業の民営を廃して専売(国営)にしたのです。
そこから得られる税収を軍備拡張に充当した訳です。
1985年(昭和60年)に中曽根康弘首相が専売公社を廃止し、JTを設立・民営化しました。
しかし、民営化と言っても完全な民間会社になった訳ではありません。
「国策としてのタバコ事業」を継承したのですから、純粋の民間企業ではあり得ない法的な義務を負うと同時に、法的な保護を受ける事となったのです。
すなわち、JTはタバコ税の納付を義務付けられる代わりに、タバコ事業の独占を許されたのです。
霞が関の省庁の中でも、予算編成と税制という強大な権力を握り、タバコ行政をも管轄する財務省。
民営化されたとは言え、財務省の管理下で、「国策会社」としてタバコの製造・販売を牛耳(ぎゅうじ)るJT。
「全量買い上げ」政策に安住しているため、生産性が向上しない葉タバコ農家。
政府の規制に守られながら商売を続けるタバコ小売店。
そして、これらの利権を堅持するために汗を流すタバコ族議員。
こうした利害関係者がタバコに関する資金によって癒着し、堅固に結びついています。これが、日本に巣くう、巨大で頑強な利権構造です。
タバコ利権構造が存在する限り、政府による喫煙促進はなくなりません。
この利権構造を打破しなければ、タバコ規制枠組み条約を遵守(じゅんしゅ)し、国民の健康を守るためのタバコ規制を進める事は不可能です。
そのために必要な事は、「たばこ事業法」「JT法」の廃止です。
そして、政府はJTの保有株を全て売却し、JTを完全民営化するべきです。
葉タバコの生産からタバコの製造・販売に至るまで、タバコ事業のすべてを財務省の支配下に置く事を定めたこれらの法律を廃止する事により、タバコ利権構造の法的基盤を解体する事が可能となります。
JT完全民営化によって全量買い入れ制度がなくなれば、葉タバコ農家は転作や廃業を余儀なくされるでしょう。
タバコ小売店も減収は必至です。
でも、心配無用です。
政府が保有するJT株の時価総額は約2兆円もあるのです。
この売却益で葉タバコ農家の転作や小売店の転業を支援すれば良いのです。
「たばこ事業法」「JT法」を廃止すれば、タバコ規制枠組み条約に則(のっと)ったタバコ規制法の制定も可能になります。
その一環として「受動喫煙防止法」を定めれば良いのです。
そして、遠くない将来、日本からタバコを一掃する「タバコ廃止法」が成立する日を夢見て、タバコ追放談議を終わりにする、予定でしたが・・・。
補足として、最近急速に普及している「新型タバコ」について、次号で述べます。
次号に続く