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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
平成30年6月1日
日本がたばこ規制枠組み条約に違反ばかりしているのは一体なぜでしょうか?
その最大の理由が、一般にはほとんど知られていない、日本特有の「タバコ利権」構造の存在です。
「たばこ事業法」の下で、財務省とJTを中心に、葉タバコ農家、タバコ小売店、タバコ族議員が結束して、タバコの生産・製造・流通の既得権をガッチリ固めた利権構造を作っているのです。
このように戦時下さながらの「国策会社」が市場を牛耳(ぎゅうじ)っている例は、世界中どこを探しても見当たりません。
この日本独自のタバコ利権構造こそが、我が国でタバコ規制枠組み条約に則(のっと)ったタバコ規制法を作れない最大の原因です。
「たばこ事業法」と「日本たばこ産業株式会社法(JT法)」の2つの法律のもとで、財務省とJTが癒着・談合してタバコ利権を構築し、国民の健康をむしばんでいるのが実体なのです。
この状況を打破しなければ、日本からタバコを一掃する事はできません。
タバコ対策の所管は、健康行政を司(つかさど)る厚生労働省であるべきです。
ところが、厚生労働省が国民の健康のために禁煙や受動喫煙防止対策を行おうとしても、タバコ産業を所管する財務省が妨害するのです。
税制や予算編成で絶大な権力を握る財務省に妨害されては、タバコ対策が進む筈(はず)がありません。
一般的に産業分野ごとに、所管する省庁は異なります。
しかし、特例として、タバコ産業については、葉タバコ農家から、国内唯一のタバコ製造会社であるJT、そしてタバコ販売業者まで、すべて財務省の支配下にあります。
つまり、タバコ産業は財務省の独占体制なのです。
「たばこ事業法」は
「タバコの原料となる国内産の葉タバコをJTが全量買い入れる」
「JTがタバコの製造を独占する」
「財務大臣がタバコの小売価格を認可する」
「財務大臣がタバコの小売り販売業を認可する」
という事を定めています。
また、「JT法」は
「政府が常時、JT株の3分の1超を保有する(すなわち筆頭株主)」
「財務大臣がJTの取締役選任、定款(ていかん)変更、事業計画を認可する」
「財務大臣がJTを監督する」
という事を定めています。
つまり、これらの法律により、財務省は国内のタバコ産業を強固に保護しています。そして、タバコの生産から流通・販売までの全てを国家管理の下(もと)に置き、タバコ税とタバコに関するすべての利権を独占しているのです。
財務省がJTの筆頭株主なのですから、JTのトップの座は常に財務省(かつての大蔵省)のOBが独占してきました。
つい最近まで、かつての大蔵省OBが、JTの会長、社長、副社長、常勤監査役に名を連ねてきました。
JTは財務省の支配下にあり、重要な天下り先なのです。
次号に続く