平成29年7月1日
今日では「喫煙は予防可能な死因の中で最も重大」と言われています。
けれども、かつては、タバコが薬草と見なされていた時代がありました。
アメリカ先住民は、古来より、タバコを神聖な薬草として崇(あが)め、その煙を神に捧げていました。
そして、儀礼や幻覚体験に用いる事により、文化に取り込んでいました。
コロンブスが新大陸を発見した際、タバコをヨーロッパに持ち帰ったため、瞬(またた)く間に世界中に広がりました。
16世紀半ば、ポルトガル駐在フランス公使であったジャン・ニコ(Jean Nicot)が、タバコを栽培し、フランス宮廷のカトリーヌ・ド・メディシス(アンリ2世の王妃)に献上したと伝わっています。
タバコに含まれる猛毒「ニコチン(nicotine)」の名称は、彼の名に由来します。
その後、科学の進歩と共に、タバコの長期使用が、各種の癌や動脈硬化疾患などを引き起こす事が、分かってきました。
では、タバコがいかに有害であるか、順に見ていきましょう。
1.タバコの煙には約70種類の発癌物質、約200種類の有害物質(毒)が含まれます。
喫煙者が喫煙時に吸い込む煙を「主流煙」、それを吐き出した煙を「呼出煙」、タバコの点火部(先端)から出る煙を「副流煙」と呼びます。
また、自分でタバコを吸う事を「能動喫煙」、タバコを吸わない人が呼出煙や副流煙の混じった空気を吸わされる事を「受動喫煙」といいます。
多くの有害物質は、比較的高温(最高約900℃)の吸煙時よりも比較的低温(最高約600℃)の自然燃焼時に発生しやすいので、副流煙は主流煙よりも多量の有害物質を含んでいます。
それゆえ、受動喫煙で生じる健康被害は、1日5~10本の能動喫煙に匹敵すると考えられています。
さらに、喫煙者の呼気や衣服、喫煙の行われていた室内・車内に付着残留していた煙の成分が遊離して、非喫煙者の心身に有害な影響をもたらす「サードハンド・スモーキング(3次喫煙)」も重大な問題です。
2.ニコチン
言わずと知れた、タバコに含まれる毒の中でも最も有名な猛毒です。
タバコ属(ニコチアナ)の葉に含まれる、天然由来の有機化合物です。
揮発性がある無色の油状液体で、極めて即効性の、非常に強い神経毒性を有します。
半数致死量は人で0.5mg~1.0mg/kgと、まさしく猛毒です。
その毒性は青酸カリの2倍以上です。
次号に続く