平成29年3月1日
最後に、性格に対する遺伝の影響を考えてみましょう。
仮に身長を決める遺伝子が1種類だけだとしましょう。
分かり易いように、「背を高くする遺伝子」と「背を低くする遺伝子」のどちらかしかないとします。
すると身長の分布はどうなるでしょうか?
分布曲線は「背の高いグループ」と「背の低いグループ」の2峰性となり、中間にはあまり人がいない分布となるでしょう。
しかし、現実には身長の分布は正規分布(左右対称、富士山のような曲線)を描きます。
20011年10月に文部科学省が公表した体力・運動能力調査によると、30-34才日本人女性の平均身長は158.6cm、標準偏差5.3cmで、分布曲線は左右対称、1峰性のきれいな正規分布です。まさしく富士山のようです。
決して、「背が高い人」「背が低い人」に分かれてはいません。
では、「身長を決める遺伝子」の影響を環境が打ち消したのでしょうか?
しかし、身長は伸ばそうと思って伸ばせる訳ではなく、逆に伸びを止めようと思っても容易には止められません。
つまり、身長には1種類だけではなく、非常に多くの遺伝子が影響し、個人個人はそれぞれ異なる遺伝子の組み合わせを持つからこそ、なだらかな個人差が生じると考えられるのです。
このような、多くの遺伝子に影響を受ける形質を多因子形質と呼びます。
細かい個人差が生じる形質は多因子形質である可能性が高いのです。
人の性格特性の個人差もなだらかであり、分布図は中央付近に位置する人が多い正規分布となります。
すなわち、性格特性も多くの遺伝子の影響を受ける多因子形質であると言えます。
身長や性格特性など、個々の値が連続的に変化するような特徴に対しては多くの遺伝子が影響するのです。
ABO血液型という限られた遺伝形式だけで、多くの遺伝子が影響する性格を決めるという説には無理があるのです。
以上、数多くの論点から血液型性格判断は誤りである事を指摘しました。
皆さんは、人と議論して自分の形勢が不利な時に「あなたが理屈っぽいのは、△型の悪い癖よ」などと、捨て台詞(ぜりふ)を吐いた事がありませんか?
それは、血液型を自己防衛の手段や気休めの道具として利用しているだけでなく、相手の人格を否定する方便(ほうべん)にしています。
血液型を言い訳にして、まじめな人間関係の構築に背を向けているのです。
かく言う私も、血液型がB型というだけで、何度も、嘲笑(ちょうしょう)されたり酒の肴(さかな)にされてきました。
「血液型による相性(あいしょう)診断」など、もっての外(ほか)です。
無益でくだらない血液型談議は卒業しましょう。
そして、論理的に思考し、自己の人格を磨き、知的な会話を楽しみたいものです。
今回で、血液型と性格についての考察を終わります。