平成28年3月1日
一般の人だけではありません。
医師の中にも、こんな事を言う人がいます。
1.男性患者では上半身を何も着けない状態にするのに対して、女性患者で はプライバシーの問題が生じる。
2.医者も女性の患者から不審に思われたくはない。
3.咳や高熱がなければ、聴診をする必要がない。
4.喘息や肺炎は着衣のままで充分、診断可能だ。
5.心臓疾患は聴診しなくても、心電図さえ記録できれば診断可能だ。
6.自分は消化器内科医だから、胸部の聴診はちゃんとやっていない。
大腸の内視鏡検査も、女性患者には行わないようにしており、女医にお願 いする。
7.肺の病気はレントゲンを撮れば診断できる。
肺を聴診する意義はほとんどない。
8.ブラジャーは外させるが、服の下から手を入れて聴診する事で、女性心 理に配慮している。
これらは、いずれも、正しい診察を行うべき医師としては不適切な発言です。
私の手元に内科診断学の教科書が4冊あります。
1冊は日本の教科書、残りの3冊はいずれも外国の教科書です。
これらの教科書のどれを読んでも、「胸部の聴診は下着の上から行って良い」とは書いてありません。
日本の教科書には、「衣服の上から聴診すると、衣服と聴診器が擦れ合って雑音を生ずる」と記載されています。
サパイラという医師が書いた教科書には「衣服の上から聴診してはいけない」とハッキリ書かれています。
確かに、下着と聴診器が擦(こす)れる音が心雑音などと紛(まぎ)らわしい場合があります。
正確な聴診を行うには下着を介さない方が良いのは当然です。
ブラジャーを外した後、服の下から手を入れて聴診するのも、服と手や聴診器が擦れあって耳障りな音がしますし、そもそも不自然な姿勢ゆえに、聴診しづらいのです。
「必要な場合に限って下着を外せば良い」という医師もいますが、必要でないなら聴診などしなければ良いのです。
下着の上からチョンチョンといい加減な聴診で済ます医師よりは、下着を外してキチンと音を聴く医師の方が、真剣に診察していると心得るべきです。
心電図やレントゲン写真が多くの情報を与えてくれる事に異を唱えるつもりはありませんし、実際、私も日常的に心電図やレントゲン検査を行って診断しています。
しかし、聴診などの理学所見の大切さは昔から変わっていないのです。
医師の診察を求めて受診する患者さんは、下着を外すのが恥ずかしくても、医師が正確な診断を行うのに協力して頂きたいものです。
以上の理由から、私は女性患者の聴診を行う際は、男性患者と同様に下着を脱いで頂きます。
当院を受診する患者さんは、私の考え方をご理解下さい。
そして、正しい診察を行えるようにご協力下さい。
今回で、医師・患者関係における性別への配慮についての考察を終わります。