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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
平成28年2月1日
前々回と前回で、女性外来についての私の考えを述べましたが、共感して頂けたでしょうか?
要約すれば、以下のような主張をしました。
1.医師たる者、「女の心・カラダは男より女の方が良く分かる」などという安易な考え方に与(くみ)してはならない。
2.医学を学ぶからには、自分がどちらの性であっても、男性・女性両方の病態生理に精通するよう努力するべきである。
3.女性外来ブームは「女性患者の診療は女性医師が行うのが望ましい」という、安易で間違った風潮である。
現実には、残念ながら、この誤った風潮が世界中に広がっています。
「産婦人科疾患の診療は女性医師が担(にな)うべきだ」という考え方が世界中に流布(るふ)しています。
そして、産婦人科の世界では、男性医師が不当に評価され差別を受けているのです。
事実、過去20年間で、世界の男性産婦人科医は激減し、日本でも同様の傾向です。
そのような嘆かわしい風潮の中、私から見れば喜ばしい現状もあります。
ここ数年、女性外来の新たな開設が少なく、むしろ公立病院などでは閉鎖するところが増えているのです。
当院の連携病院の一つである藤沢市民病院でも、平成25年4月に女性外来が閉鎖されました。
まさか、私の意見を聞いたからではないでしょうが、嬉しいニュースでした。
偉そうな言い方ですが、藤沢市民病院が男女の性別に関係なく平等な医療を行う方向に舵を切ったのは、誠に賢明な判断であったと思います。
当時の院長先生に拍手を送ります。
女性外来の蔓延と同様に、私が不快に感じている事があります。
それは、医師が女性の胸部を聴診する際、下着を外(はず)させるのはけしからん、下着の上から聴診するのがマナーだ、という論調が雑誌やインターネット上にはびこっている事です。
インターネット上のあるサイトには、次のような意見が書かれていました。
1.医者が女性を診察する時、ブラジャーをはずすよう強制するのはセクハ ラだ。
2.ブラジャーをはずすのは単なる医者の趣味であり、わいせつ行為である。
3.医者が不必要に患者の体にサワルのは、自分が医者だという特権意識があるからだ。
4.女性患者のブラジャーを外すよう強要するのは女性を見下(みくだ)しているからであり、犯罪だ。人権侵害だ。見せてたまるか!さもなくば、金を払え!
5.ブラジャーをはずせと言われたら拒否しよう。
しっかりと抗議し、是正を求め、それでもはずせと言われたら、受診拒否しよう。
いずれも、とんでもない言いがかりです。
見当違いも甚(はなは)だしく、不愉快極(きわ)まりない発言です。
次号に続く