平成28年1月1日
明けましておめでとうございます。
今年も率直な意見を発信します。お付き合い下さい。
女性医師は女性患者と同性であるが故(ゆえ)に、女性の健康不安を理解しやすく、患者さんも相談しやすい、と考える人達が女性外来の設立に奔走(ほんそう)したのでしょう。
そして、大部分のマスコミもこのような論調で女性外来の意義を礼賛(らいさん)しています。
しかし、ただ同性であるだけで女性の痛みを理解できる訳ではありません。
患者さんの話に耳を傾け、その中から必要な情報を取捨選択(しゅしゃせんたく)し、的確な診断を下し、迅速に治療するという一連の診療技術は、一朝一夕(いっちょういっせき)に身に付くものではありません。
医師として長年に亘(わた)って経験を積み、研鑚を続けてこそ、初めて会得(えとく)できるのです。
そして、この努力は医師として働く限り、一生続けなければなりません。
これは、医師の性別にかかわらず、普遍的な真理です。
男性医師も女性医師も、医師であれば当然勉強し続けなければいけないのです。
同様に、患者さんの性別にかかわらず、医師は真剣に訴えを聞き、的確に診断し、正しい治療を行わなければなりません。
女性患者の診察は女性医師が行うのが望ましいと言うならば、男性患者の診察は男性医師が行うのが望ましいという事になってしまいます。
産婦人科はすべて女性医師が担当し、男性の泌尿器はすべて男性医師が診察しなければならない、という世界は私には想像できません。
そうなってしまえば、まさしく世(よ)も末(すえ)です。
確かに男性医師は女性特有の症状を経験する事ができません。
同様に、女性医師は男性の尿道痛や前立腺癌の症状を経験する事はできません。
だからと言って、女性患者の診療を女性外来で女性医師に任せておけば良いのでしょうか?そして、男性泌尿器の診療は男性医師に任せておけば良いのでしょうか?
人間には男と女しかいません。半分ずつです。
患者さんの半数は男で、残りの半数は女なのです。
私は医学部を卒業し医師免許を取得した日から今日まで、患者さんの性別に関係なく、正しい診療を行うのが当然の義務であると思ってきました。
相手が男であろうと女であろうと、その気持ちを理解し、その期待に応えようと努力してきたつもりです。
診療において大切なのは、医師自らが患者さんの不調を経験している事ではありません。患者さんの訴えを聞いて、どういう状況なのか理解する能力を磨く事こそが重要なのです。
そして、病気の原因や治療法を見極(みきわ)める知識を身につける努力を続け、経験を積む事が、医師の仕事だと考えています。
女性の診療を女性外来に任せておいて良いとは決して思いません。
そんな単純なものではないのです
女性外来の設置を賞賛(しょうさん)する風潮は間違っていると、私は信念を持って主張します。
これからも、堂々と女性患者を診療できる男性医師であり続けたいと思っています。
次号に続く