2015年7月1日
当院で用いるステロイドの大部分は外用剤なので、今後は主に外用剤について話します。前号で例に挙げたスキンケア商品「奇跡の肌△△」の宣伝文句はウソばかりです。
順番に説明しましょう。
①ステロイドは「使い続けなくてはいけない」などという事はありません。
我々の日常臨床では、ステロイド外用剤に抵抗性(連用による効果減弱)があるという経験はありません。
目的とする抗炎症効果が得られれば、ステロイドは減量・中止すれば良いのです。
決して「使い続けなくてはいけない」ものではありません。
②ステロイドの「代表的な副作用として、糖尿病、感染症、胃・十二指腸潰瘍、骨粗鬆症、筋力低下、精神症状、ムーンフェイス、月経異常、副腎皮質機能低下」を挙げています。
しかし、これらはすべて一定量以上の内服薬を長期に連用した際に起こり得る副作用です。外用薬ではこれらの全身的副作用は起き得ません。
③クッシング症候群とは糖質コルチコイドの慢性的な分泌過剰によって生じる様々な症状の総称です。ステロイドの外用とは全く無関係です。
④緑内障はステロイド点眼薬の長期連用によって起こり得ますが、皮膚に塗るだけでは起こり得ません。
⑤白内障もステロイド外用とは無関係です。ステロイド点眼薬とも無関係です。
むしろ、白内障の手術後に、炎症を抑えるためにステロイド点眼薬を用いるぐらいです。
⑥間質性肺炎もステロイド外用とは無関係です。
それどころか、間質性肺炎の治療としてステロイド剤の注射や内服が第一選択薬として用いられます。
⑦皮膚線条、紫斑、毛細血管拡張、多毛はステロイド外用剤の副作用として知っておく必要があります。このサイトにある唯一正しい記述です。
これについては次号で述べます。
⑧ステロイド外用薬によって「腎機能の低下」などあり得ません。
ただし、ステロイドの内服薬を長期に大量連用すると副腎皮質機能が抑制されるため、内服を急に中止すると、副腎機能不全を来す事があります。
「奇跡の肌△△」の宣伝文句を書いた人物は、腎と副腎を混同しているのでしょう。
無知をさらけ出している訳です。
⑨ステロイド外用によって「皮膚がんの発生率が上が」ったり、「大人になって麻酔を安心して使えなくなる」事などあり得ません。
⑩「足裏マッサージのセラピストから『お客さん、腎臓が弱いですね』と言われます。」
に至っては、笑止千万。論評に値しません。
このサイト以外にも、ステロイドの有害性を誇張し、自分の商品を宣伝するサイトが無数にありますが、賢明な皆さんはくれぐれも信用しないで下さい。
次号に続く