平成27年2月1日
先日、あるテレビ番組で、在宅医療について考えさせられる話がありました。
80才代のおじいちゃん、おばあちゃんの二人暮らしの家庭があります。
おばあちゃんは認知症で寝たきりですが、おじいちゃんの顔は分かります。
おばあちゃんを定期的に訪問診療している医師は、次のように取材陣に話しました。
「私は高齢の患者には特別な治療は行いません。
家族には、容態が悪化しても決して救急車を呼ばないように伝えてあります。
もし、おばあちゃんが肺炎になったら、熱だけを冷ましてあげます。
80才という年齢を考えたら、やり過ぎない治療というものが大事で、自然に着地させてあげる。
何でもかんでも入院っていうふうにしないで、基本的には家で引っ張っていく。
なるべくご主人の力を借りながら、家での治療を続けたらどうかと思います。
そのためなら力になってあげたいと思いますので、何かあったらいつでも電話下さいとご主人には言ってあります」
そのおばあちゃんが、ある日、本当に誤嚥性(ごえんせい)肺炎になってしまいました。
38℃の熱があり、食欲もほとんどありません。
おじいちゃんは「食事も取れなくなっているから、病院に入院させて点滴してやって欲しい」と医師に懇願(こんがん)しました。
しかし、医師は「おばあちゃんはもう80歳だからさ、入院なんてしないでこのまま様子を見ようよ」と、おじいちゃんを諭(さと)しました。
おじいちゃんは渋々(しぶしぶ)医師の指示に従う事にしましたが、あきらめられません。
呼びかけても反応しないおばあちゃんを前に、動揺もしていました。
翌日、往診に来た医師に、「家内は丸(まる)一日何も食べていない。
元気をつけさせるため、何か食べさせたい」と言い出しました。
医師は、「意識がない老人に無理やり食べさせても、また、誤嚥するだけだ。
それより、このまま看取(みと)った方が良い」と考えていましたから、
「やめといた方が良いと思うよ」と答えました。
幸い、翌日、おばあちゃんは意識を取り戻しました。
おじいちゃんは大喜びです。
「おっ、笑顔になったじゃん。なあ、分かるか?おっ、声も出てきたぞ。ようし」
そう言いながら、おじいちゃんは、おばあちゃんの口に好物の卵豆腐(たまごどうふ)を運びました。
その様子を見ながら、医師は
「また、誤嚥する恐れがあるので、食事は危険だと思いますが、ダメだとは言えませんね。
自宅で看取るためには、介護する家族の気持ちをくみ取る事も大切だと考えているからです」と取材陣に話しました。
その後、おばあちゃんの容態は徐々に回復し、小康状態を保っているそうです。
皆さんはこの話を聞いてどう思いますか?
次号に続く