平成26年11月1日
「尊厳死」に賛同する方は多く、日本尊厳死協会の会員数は現在約13万人だそうです。
国会でも、超党派の「尊厳死法制化を考える議員連盟」が「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案」(いわゆる尊厳死法案)を昨年3月に発表しました。
法案の内容は次の通りです。
1.回復の可能性がなく死期が間近(まぢか)な状態を終末期と定義し、終末期かどうかは2人の医師が判断する事。
2.終末期の患者が延命措置を望まない意思を書面などで表示していれ ば、医師が延命治療を開始しなくても刑事責任を問われない。
発表会場には、車椅子に乗った障害者や人工呼吸器を付けた難病患者さん達も参加しました。
支援団体関係者らは、「終末期や障害者の定義が曖昧だ」「命の軽視が始まる」「人の命の切り捨てに繋(つな)がりかねない」「過去に書いたリビング・ウィルが現在の本人の意思と言えるのか?」と、この法案に懸念を示していました。
尊厳死法案には、障害者や難病患者の団体、日本弁護士連合会などが反対しています。日本医師会も「終末期医療の現場は多様で、法律で縛(しば)って混乱を招くのは望ましくない」と慎重な姿勢を示しています。
尊厳死法案に真っ向から反対する、その名もズバリ「安楽死・尊厳死法制化を阻止する会」が発表した声明を抜粋(ばっすい)します。
「日本尊厳死協会のリビング・ウィルは、将来起こるかも知れない状態を想定して前もって行う意思表示であり、実際に延命措置に直面しての意思表示ではない。
尊厳死の法制化は、人に『死ぬ義務』を課し、『弱者に死の選択を迫る』権利を周囲の人間に与えようとするものだ。
ただでさえ弱い立場の人に『周りに迷惑をかけずに自分から進んで早く死ね』と死を迫るのは許せない。
『あのようになってまで生きていたくない』と、生きている人の状態を『あのように』と見る、自らの内に潜(ひそ)む選別の思想こそ反省する必要がある。
尊厳死法制化の動きは、人工呼吸器を使って呼吸し、栄養・水分補給を受けて生活している人々をはじめ、障害者や高齢者に『死を強制される』という目に見えない恐怖を抱(いだ)かせるものとなる。
今日、医療の進歩により、遷延性(せんえんせい)意識障害(持続的植物状態)者の回復例が何例も報告されている。
また、『死期が間近である』との判定の後、蘇生した事例も数多くある。
命ある限り精一杯生き抜く事が人間の本質である。
生きようとする人間の意思と願いを、気兼(きが)ねなく全うできる医療体制や社会体制が不備のまま、『尊厳死』を法制化する事は、病に苦しむ人や高齢者に『死の選択を迫る』圧力になりかねない。
我々は真に生命を尊重する社会、弱い立場の人やその家族が人的・経済的負担を心配する必要のない社会を目指すべきだ」
全くその通りだと、私も思います。
次号に続く