平成26年5月1日
前回、女性1,000人に子宮頚癌予防ワクチン(HPVワクチン)を打つと、その内17人が子宮頚癌に罹(かか)らずに済み、4人が子宮頚癌で死なずに済むという効果が判明しました。
しかし、昨年11月1日付けの本欄で述べたように、昨年6月14日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の副反応検討部会で、HPVワクチン接種後に持続的な疼痛を訴える症例の報告がなされました。
そして、同日、厚生労働省健康局長より各都道府県知事宛てに、「副反応の発生頻度がより明らかになり国民に適切な情報提供ができるまでの間、HPVワクチンの積極的な接種勧奨について一時差し控える」勧告が出されました。
その結果、HPVワクチンは、定期接種(接種対象年齢は無料)でありながら、事実上、全国一斉に接種が停止しています。
今後、接種を見合わせた人の中から、大勢の子宮頚癌患者が発生する事が予想されます。
国はワクチン行政の責任を放棄しています。
マスコミもショッキングな映像を流し、視聴者に「HPVワクチンの恐怖」をむやみに植え付ける事に終始しています。
HPVワクチンの効用と副反応を正確に国民に伝える事を怠っているのです。
第一、HPVワクチン接種勧奨中止を決めた検討部会の委員10名の中には、子宮頚癌診療に携わる産婦人科医が一人もいないのです。
物事を判断するに当たり、その一面だけを見て、別の側面を無視してはいけません。
本欄の目的は、HPVワクチンの効用と副反応を公平に見比べて、正当に判断する事にあります。
では、HPVワクチンに伴う「疼痛関連症例等」の副反応とはどのようなものなのか、検討しましょう。
1.サーバリックス(GSK社、平成21年12月販売開始)
販売開始以来、平成25年3月末まで、接種延べ人数:6,957,386人
同期間の「重篤」な副反応:91例 その内、接種と関連有りと推測されるもの:58例
副反応の内容:注射部位の疼痛、発熱、失神、意識消失、血圧低下、四肢痛など
死亡:ゼロ
2.ガーダシル(MSD社、平成23年8月販売開始)
販売開始以来、平成25年3月末まで、接種延べ人数:1,688,761人
同期間の「重篤」な副反応:15例 その内、接種と関連有りと推測されるもの:8例
副反応の内容:失神、意識消失、血圧低下、けいれんなど
死亡:ゼロ
両者を合計すると、2つのHPVワクチンを延べ8,646,147人に接種した結果、接種と関連あると考えられる「重篤」な副反応が66人に生じたという事です。
「重篤」な副反応の発生率は0.000007633です。
すなわち、100万人に接種すれば8人、10万人に接種しても1人発症するかどうかです。
1,000人や1万人のレベルなら発症率はほぼゼロです。
ここで注意しておきたいのは、上の報告における「重篤」という言葉が必ずしも「重症」を意味している訳ではないという事です。
すなわち、報告者(医師だけなく、患者本人やその家族も含まれます)が「重篤」と判断した例は、すべて「重篤」としてカウントしているのです。
従って、「重篤」の症例の中には、医学的には重症と呼べない例が少なからず含まれています。
次号へ続く