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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
平成26年3月1日
ほとんど全ての子宮頚癌はパピローマウイルスの感染によって生じます。
子宮頚癌は若年女性に多く発生する癌であり、20~30歳代の女性に発生する悪性腫瘍の中で第1位を占めています。出産・子育て世代の女性を襲う疾患であるため、欧米ではマザーキラーと呼ばれています。
我が国では年間約15,000人が新たに子宮頚癌に罹患(りかん)し、約3,500人が子宮頚癌で死亡していると推定されます。
しかも、若年女性における子宮頚癌の発生頻度は増加の一途を辿(たど)っています。
ここ20年で日本の20~30歳代の子宮頚癌患者数が2倍以上に増加しました。
今後さらに1.5倍以上に増えると予想されています。
性交渉開始の低年齢化が最大の原因と考えられます。
子宮頚癌による死亡が増加するという事は、母親を失う子供、妻を失う夫、娘を失う親が増えるという事です。
子宮頚癌の罹患数が増加するという事は、生命を脅(おびや)かされ、生活の質が低下する女性が増えるという事ですが、それだけに留(とど)まりません。
初婚年齢が高齢化し少子高齢化が進む中、日本の将来を担(にな)う世代の誕生に必要不可欠な子宮を失う事に繋(つな)がるという点で、国難とも言える大問題です。
パピローマウィルスは性行為によって感染します。性媒介感染症の1種です。
昔から、修道院に若いうちに入って修道女としての生活をしている女性は子宮頚癌になりにくい事が知られています。異性との関係が希薄なため、生殖器がパピローマウイルスに感染する機会が少ないためです。
日本人女性が一生のうち一度でも、パピローマウィルスに感染する確率は80%と考えられています。ただし、16型、18型などの発癌性のパピローマウィルスの感染によって、すぐに癌になるのではありません。
99%はウィルスが自然に消退し、1%弱が感染後10年以上かかって癌化するのです。
どのような女性で癌化するのか、その機序は解明されていないため、感染した全ての女性が子宮頚癌を発症する危険があると言えます。
若者達の性の乱れがパピローマウィルス感染の危険を高めている事は確実です。
しかし、たった一度でも性交渉の経験がある女性なら、誰でも感染する可能性があります。事実、通常の結婚生活を送っている女性にも子宮頚癌は発生します。
従って、子宮頚癌になった女性を「異性関係がお盛ん」と見なすのは間違いです。
子宮頚癌の原因となるパピローマウィルスの70%を占めるのが16型と18型です。
パピローマウィルスによる子宮頚癌を予防するためのワクチンがアメリカと欧州の製薬会社によって開発されました。
既に120カ国以上で承認され、接種費用を公費で助成する国も40カ国以上あります。
次号へ続く