平成25年10月1日
政府が、個人情報を集約し国民を仕分けるために、共通番号を利用しようとしている事を前回明らかにしました。
政府の番号制度創設推進本部が主催し、2011年に開催された「番号制度シンポジウム」で、一般参加者から次のような質問が出ました。
「税金を払っていないのに多くの公費を使っている人は利用を抑制して下さい、というような目的に共通番号が使われる心配はないか?」
この質問に対して、政府の御用学者は次のように明(あ)け透(す)けに答えました。
「政府予算の5割以上が社会福祉関連となった。これは大変な時代だ。公的医療保険制度の持続性に疑問符が付く状況だ。誰がこの保険制度の頻繁な利用者かを明らかにするのが共通番号制度の目的だ。末期の病人一人一人の生存日数を考えると、末期医療に対して保険制度から支出する意味があるのか?」
これは恐ろしい回答です。
末期の病人を公費を使って治療するのは止(や)めよう、と言っているのも同然です。
共通番号制によって、多額の医療費を使う重病患者、多額の介護費用を使う身体・精神障害者や認知症老人などは、自己負担か命の放棄かの選択を迫られるのです。
当然、パチンコに出掛ける生活保護受給者は生活保護を打ち切られるでしょう。
「支援は必要ない」と見なされた人には、余命は保証されないのです。
共通番号制の導入によって施行可能となる社会保障個人会計は、支払った税金や社会保険料の合計と将来得られる給付額の収支勘定を国民自らに確認させる仕組みです。
言い方を変えれば、国民一人一人が具体的な金額として社会保障の損得を確認させられる事になります。
この確認作業によって給付への不安が生じた者は、自己責任のもとで民間保険に加入したり、金融商品を購入したりして「自立」せよという訳です。
ここで経団連の出番です。
経団連に加盟している保険会社や金融会社が国民の「自立」を商売のネタにするのです。
「真に手を差し伸べるべき人」「適時・適切に支援を供給」「充実、効率的」「自立・自助」「民間利用」「個別化・差別化」など聞こえの良い言葉を並べられると、素晴らしい社会が到来するのではないかという錯覚に陥ってしまいそうです。
しかし、騙されてはいけません。
共通番号制によって政府や経団連が行おうとしているのは、生活保護の打ち切り、サービス受給の制限、そして医療保険・介護保険・福祉・年金などの制度からの排除です。
共通番号制には、種々の手続き(確定申告や住民登録など)における事務作業の軽減以外にはメリットがありません。
共通番号制などなくても、現在の社会保障の各分野別の番号管理で充分です。
民間シンクタンクである野村総合研究所は「共通番号制がなければ出来ない事など、ほとんどない」と分析しています。
共通番号制が政策として出されてきた経緯や背景、そして、これが社会保障に何をもたらすのかがお分かり頂けたでしょうか?
決して、我が国に導入してはいけない制度なのです。
今回で、共通番号制度についてのお話を終わります。