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Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
平成25年8月1日
政府は、国民一人一人が税・社会保障各分野に共通する番号を持つ事による様々な利便性を喧伝(けんでん)しています。その内容は、前回述べました。
しかし、その反面、この制度には多くの弊害があるのです。
マスコミが、共通番号制が抱(かか)える危険として口を揃えて指摘するのが、個人情報のインターネット上への漏洩、成りすまし悪用、サイバー攻撃による全国民情報の略奪などの懸念です。その際の被害への対応は誰がどうやって行うのでしょうか?
損害賠償費用は想像を絶する額になるでしょう。
また、そもそも全国民の所得を正確に捕捉するなど、絵空事(えそらごと)に過ぎません。
国内で行われる全ての商取引や、海外投資による利益を完全に把握する事など、不可能だからです。
その上、共通番号制にはもっと重大な危険が潜んでいるのです。
ほとんどのマスコミはこの危険について報道しません。あるいは、隠しているのかも知れません。しかし、これこそが共通番号制の真の目的なのです。
共通番号制の目玉として、政府が謳(うた)い文句にしている「総合合算制度」の目的は、低所得者対策などではありません。真の目的は「社会保障個人会計」です。
「社会保障個人会計」こそ、共通番号制導入によって可能となる悪政なのです。
「社会保障個人会計」については「院長から一言(平成22年6月1日)」で、レセプトオンライン請求の「完全義務化」に関わる問題として説明しました。
読んでいない方のために、一部を抜粋し、加筆します。
かつての(民主党への政権交代以前の)自民・公明政府は、「国民の利便性向上」「保険者・サービス提供者等の事務効率化」を謳(うた)い文句に、「社会保障カード」の2011年導入を目指していました。
これは医療・介護・年金の3つの保険証を1枚のカードに集約し、インターネットを介して国民自(みずか)らがいつでも自身の医療・健康情報、年金記録、保険料額や納付状況を閲覧できるシステムの事です。
一見、素晴らしいシステムのようですが、これによって、医療・健康管理を国民に「自己責任」として押しつけ、公的医療給付範囲を縮小しようという意図があります。
政権交代後の民主党政府は、さらに、この「社会保障カード」を住民基本台帳と統合する事も狙っていました。
これにより、国民を背番号管理し、社会保障給付を一本化し、個人ごとに総額管理する「社会保障個人会計」を導入するのが、最終的な目的です。
医療・介護・年金を一括管理し、全ての給付を削減しようという訳です。
「社会保障個人会計」が構築されると、どのような世の中になるのでしょうか?
その1つが「禿鷹(はげたか)会計システム」です。すなわち、個人の死亡時に財産が余っていれば、「保障が手厚(てあつ」すぎた」と判断され、死後精算により、遺産・相続財産から保険金が追加徴収されてしまうのです。
2つ目は、単年度精算が可能となる事です。
医療費や介護費を使い過ぎた翌年には保険料が値上げされたり、使い過ぎた人の終末期医療は給付を抑制されたりする限度額管理(年度間繰り延べ型)が行われます。
死を目前にした患者が「あなたは今まで医療費を使い過ぎたので、上限を超えた分は自己負担して下さい」と言われるのです。
さらに、医療費を使い過ぎた人には、年金支給額や介護保険の利用限度額を減らす限度額管理(制度間付け替え型)も構想されています。
こうなれば、社会保障制度そのものが崩壊してしまいます。
先月の参議院選挙で衆参のねじれを解消し一党独裁となった安倍自民党政権が、マイナンバー制導入によって行おうとしている最大の悪政が、この「社会保障個人会計」です。
これこそが、マイナンバー制の真の狙いなのです。
次号に続く