平成24年6月1日
健康情報のウソ・ホント 第17回 マイナスイオン(続き)
自称、マイナスイオン専門会社「△△企画」はマイナスイオン発生器「××ハウス」以外にも、様々なマイナスイオン関連商品を販売し、次のように広告しています。
1.携帯型マイナスイオン発生器
携帯タイプでありながら、破格の発生パワーを持つマイナスイオン発生器。
他社製を圧倒する空気浄化パワーで、持ち運べる空気清浄機としても好評。
2.マイナスイオンドライヤー
200万個以上/ccと十分なマイナスイオン量を保持。
髪の毛に潤いを与え、ハネたりしにくいまとまりのあるサラサラ髪を実現。
3.トルマリンシート
静止状態で安定してマイナスイオンを発生。人体による圧力でさらに多くのマイナスイオンを発生。腰巻・腹巻・座布団などとして使える。
4.ポケットトルマリン
いつもポケットに忍ばせて、いきいきライフ!ポケットなどに入れるだけでマイナスイオンを取り込める。マイナスイオン発生のための実績のある技術採用。
トルマリンは、ケイ酸塩鉱物で、結晶を熱すると電位差を発生しますが、乾電池よりも微弱です。まして、「マイナスイオン」を発生するなど荒唐無稽なデタラメです。
「圧力をかけるとさらに多くのマイナスイオンが発生」したり、「ポケットに入れるだけでマイナスイオンを取り込める」などというくだりには、アホくさくてコメントのしようもありません。無論、これらの商品が全てデタラメである事は、賢明な皆さんなら容易にお分かりでしょう。
平成18年11月に東京都生活文化局が「マイナスイオンをうたう商品の表示に関する科学的視点からの検証について」という報告書を発表しています。要約すると、
①これらの商品の「マイナスイオン」が具体的にどのような物質(原子、分子、分子集団等)であるかを実証したデータはない。
②「マイナスイオン」の発生量は、測定条件、測定環境、測定方法等が不備・曖昧なものが多く、客観的に実証されたものとは認められない。
③「質の高い眠りを提供」「体細胞を活性化させる」「ほこりや花粉を除去する」などといった効果に関して、「マイナスイオン」が関与している事を具体的に示す試験結果等はなく、客観的な根拠に基づくものとは認められない。
④インターネットを利用して通信販売を行う事業者は、「マイナスイオン」商品に限らず、商品に関する十分な情報を持たず、客観的な事実に基づかない表示を行っている場合が多い。
⑤消費者へのアドバイス
消費者は、一見、科学的な根拠に基づくかの様にみえる効果・性能を謳(うた)った表示であっても、これを鵜呑(うの)みにせず、商品を合理的に選択する必要がある。
私が連載で述べたかった事はこの報告書の結論の通りです。
最後に、ノーベル化学賞受賞者の野依良治(のより りょうじ)・名古屋大学大学院教授(現・理化学研究所理事長)の言葉を紹介して、マイナスイオンに関する説明を終わります。
「科学的に理解するには、マイナスイオンとは何か、まず物質を特定し、その上で効果を議論しなければならない。実態のない言葉の独り歩きはおかしい」