平成24年2月1日
健康情報のウソ・ホント 第13回 コエンザイムQ10(続き)
広告会社は「最近の調査で、低血圧の人はコエンザイムQ10の血中濃度が低いということがわかった。コエンザイムQ10は低血圧にも効果的であるという報告がある。」という馬鹿げた宣伝もしています。
「院長から一言(平成23年12月1日)」で述べた様に、コエンザイムQ10は細胞内のミトコンドリアという器官の中に存在しており、血液中に溶けているのではありません。
血液中には存在しない物質の血中濃度など、どうやって測ったというのでしょうか?
まさしく、自らの無知をさらけ出した大嘘です。全く呆(あき)れてしまいます。
コエンザイムQ10の摂取量については、どの程度までなら摂取しても安全なのかという上限がまだよくわかっていません。
多量に摂取した場合に軽度の胃腸症状(悪心、下痢、上腹部痛)が現れるという報告があり、1日に数10mg以上の過剰摂取は避けた方が望ましいと考えられます。
厚生労働省も医薬品として用いられる量(1日30mg)を超えないようにとの通知を出しています。けれども、広告会社はこれを無視して「一般的に健康維持や老化防止が目的であれば、1日100mg、病気の兆候がある場合は300㎎を目安にするのが良い。また、ストレスを抱えている人やスポーツなどで体力を使う人も、多めに摂取することが良いとされている。」などと、とんでもないデタラメを言っています。
かつて日本では、ユビデカレノン(コエンザイムQ10)から開発された「イデベノンIdebenone(アバン)」が脳循環・代謝改善剤として武田薬品工業(株)から販売されていました。私も、脳の働きを良くする薬は他にないため、「アバン」を処方した経験があります。しかし、この薬には脳循環・代謝改善という薬理効果は認められない事が明らかとなり、1998年に医薬品の承認を取り消されました。
「院長から一言(平成23年12月1日)」で述べたように、ユビデカレノン(コエンザイムQ10)の心機能に及ぼす効果は否定されていますから、うっ血性心不全の治療薬としての承認も取り消すべきです。
通信販売のカタログを調べた所、「△△△ヘルシーフーズ」という会社の「×××Q10 MAX」という商品は1カ月分¥11,500だそうです。私がこれだけ説明したのですから、賢明な皆さんは、こんなバカバカしい商品を買うのはお止(や)めになる事でしょう。
それとも、「自分が飲んでいるコエンザイムQ10は、もっと信用できる会社の製品で純度が高く、値段もそれほど高くないから」と言って、飲み続けますか?