平成24年1月1日
明けましておめでとうございます。
今年も月に一度、おもしろい話題を提供していこうと思います。
健康情報のウソ・ホント 第12回 コエンザイムQ10(続き)
食品としての販売を認めておきながら、厚生労働省は今もなお製薬会社にコエンザイムQ10を医師の処方箋が必要な保険医薬品としての販売も認めています。
これは、日本の厚生行政の不可解さを示す事例の1つですが、これについて追求するのは本欄の目的から逸(そ)れるので止(や)めておきます。
ちなみに、米国FDA(食品医薬品局)はコエンザイムQ10を薬剤として認めておらず、あくまでも食品としての位置付けしかしていません。
先月号の「院長から一言」で述べた様に、コエンザイムQ10の心機能に及ぼす効果は否定されていますから、広告会社がコエンザイムQ10の効能として挙げている「心臓の機能が高まり、心臓が送り出す血液量が増え、全身の血行が良くなり、冷え性の症状が緩和される」「心臓のポンプ機能が高まるので、めまいや寝起きの悪さといった症状が改善される」というのは真っ赤なウソです。
まして、「免疫力を高める」「紫外線による肌へのダメージを防ぐ」「余計な体脂肪が蓄積されるのを防ぎ、ダイエット効果につながる」「脚の動脈を広げて血流を良くし、下半身の部分痩せにも効果を発揮する」「疲労した細胞の活力回復を早め、疲労の蓄積を防ぐことができる」「細胞を元気にするため、当然、シワやシミ・くすみなどの肌のトラブルにも良い効果を発揮し、きれいになる」等の宣伝文句を実証するデータは何一つ存在しません。
広告会社は、「コエンザイムQ10には抗酸化力により、激しい運動をしても筋肉細胞が壊れないように守る働きがある」とも言っています。
酸化とは、化学的には電子を奪われる変化を指しますが、広く一般には物質が酸素と化合する事をいいます。生体内で生じる酸化反応としてよく知られているのが、炭素間の二重結合を2個以上含む脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)が酸素と結合して過酸化脂質と呼ばれる物質に変化する現象です。この過酸化脂質による動脈内皮細胞の障害が引き金となって動脈硬化が進展し、心筋梗塞や脳梗塞が発症すると考える学者もいます。
また、過酸化脂質が発癌にも関与している可能性も指摘されています。
最近、この酸化を阻害する作用を意味する言葉として、「抗酸化」が流行しています。特に、栄養食品メーカーがまるで不老長寿の切り札のごとく、「抗酸化作用」や「抗酸化力」を売り物にした商品を乱発しています。
しかしながら、抗酸化作用を有するという事が直ちに老化防止効果にはつながりません。
そもそも、コエンザイムQ10に抗酸化作用がある事は証明されていませんし、ましてや、「激しい運動をしても筋肉細胞が壊れないように守る」効果を実証するような臨床データはどこにもありません。
広告会社は勝手に思いつくままに、様々なバラ色の効果を書き連ねているにすぎないと言わざるを得ません。
人を馬鹿にした、子供騙(だま)しです。
次号へ続く