平成23年9月1日
コンドロイチン、ヒアルロン酸、グルコサミン(続き)
変形性関節症の患者さんは当院でも非常に多いので、もう少し詳しく説明しましょう。この病気は「関節軟骨の変性・摩耗とその後の軟骨・骨の新生増殖、および二次性滑膜炎などに基づく進行性の変性関節疾患」と定義されます。つまり、老化などの原因で関節の軟骨が傷み、すり減ると、人間の体はそれを修復しようとします。しかし、正常な状態に修復することは出来ず、周囲の負担のかかっていない部位に異常軟骨や骨棘(こつきょく、骨がトゲの様に出っ張る事)として増殖します。こうして関節の変形が進むと同時に、関節内の滑膜という組織が炎症を起こして、関節内に水が貯まります。
関節の変形は、全身のどの関節にも発生し、加齢とともに発生頻度は増加します。
しかし関節の変形があっても、特に体重のかからない関節では痛みなどの症状が全くない場合も多く、関節の変形に症状が伴った状態を「変形性関節症」と呼びます。
「コンドロイチン○○錠」の宣伝文句に「膝や腰の痛みを感じ始めたら、コンドロイチンがかなり不足している証拠です」とありますが、膝や腰の痛みの原因は変形性関節症だけではありません。また、「できれば、痛みを感じ始める前に、コンドロイチン○○錠を飲んで、意識的にコンドロイチンを摂取するよう心がけましょう。膝関節だけでなく、椎間板ヘルニアや腰痛、肩こりなど、さまざまな部位のつらい症状に優れた効果を発揮します。」と謳(うた)っていますが、椎間板ヘルニアは変形性関節症とは異なる疾患であり、コンドロイチンの減少とは全く無関係です。
皮膚や関節滑液中のヒアルロン酸も、軟骨中のコンドロイチンAやCと同様に、数日から数週間で分解されると同時に、新しいヒアルロン酸が合成され置き換わっています。そして、やはり、分解と合成のスピードのバランスが崩れると(合成のスピードが分解のスピードより遅くなると)組織中のヒアルロン酸の量が減ってきます。
これも老化現象の1つです。
コンドロイチンもヒアルロン酸も、酸性ムコ多糖という高分子化合物であるため、口から摂取してもそのままの形では体内に吸収されません。
どちらも、アミラーゼという分解酵素によって切断され、糖が2つつながっただけの低分子物質となり、小腸粘膜の上皮細胞に取り込まれます。
そして、小腸上皮細胞の中でさらに別の分解酵素によって単糖にまで分解され吸収されるのです。
百歩譲って、仮にコンドロイチンやヒアルロン酸がそのままの形で小腸から吸収され血液中を運ばれるとしても、軟骨には血管がありませんので、軟骨内に入ることはできません。
つまり、コンドロイチンを飲んでも、それが軟骨へ移行して軟骨の摩耗を防いでくれるなどということはあり得ないのです。
同様に、ヒアルロン酸を飲んでも、それが皮膚へ移行して皮膚の弾力を保ってくれたり、関節の滑液中に移行して潤滑油の働きをしてくれる訳ではないのです。
次号へ続く