2010年9月1日
9.療養病床38万床を維持
民主党は、次のように公約しています。
①自公政権の「療養病床削減計画」を凍結する。
②総枠として、療養病床38万床を維持する。
この公約を理解するために、まず、療養病床について説明しましょう。
療養病床とは、一言で言えば、昔の「老人病院」です。1992年以降、高齢者の長期入院施設として、「老人病院」が「療養型病床群」という名称に代わり、さらに2000年の介護保険制度開始以降、医療保険から費用が支払われる「医療型療養病床」と、介護保険から費用が支払われる「介護型療養病床」に分けられました。医療費削減を目論(もくろ)む旧政府は、「病床(ベッド)数と入院日数は医療費と強い相関関係がある」と考え、療養病床削減により、病床数と平均入院日数の両方を一気に削減し、医療費削減につなげようとしました。
2006年、小泉純一郎首相は医療制度改革関連法を強権的に成立させると同時に、「療養病床削減計画」を打ち出しました。これは、当時38万床あった療 養病床のうち、「介護型療養病床」(13万床)を2012年までに全廃し、「医療型療養病床」(25万床)も10万床削減して15万床にし、さらにその診
療報酬も引き下げるという、とんでもない計画です。合計23万人もの患者を追い出し、介護施設への入所、あるいは家庭での介護に委(ゆだ)ねようという魂 胆です。
介護型療養病床が全廃されるとなると、介護型療養病床を運営している中小病院は、老人保健施設やグループホームなどの介護施設に転換するか、さもなけれ ば廃院せざるを得ません。介護施設に転換しても、介護報酬は療養病床よりも低く、経営悪化に苦しむ事になります。医療型療養病床を運営する中小病院も、
25万床のうち10万床も削減されてしまうのですから、頑張って存続する15万床の中に入るか、介護施設に転換して低い介護報酬に甘んじるか、さもなけれ ば廃院するか、苦しい選択を迫られます。
要するに、「療養病床削減計画」とは「病院潰(つぶ)し」計画なのです。国民(高齢者)の医療に対する国家の責任を放棄し、地方(介護保険の保険者であ る市町村)や個人(家庭)に転嫁しよういう計画です。厚生労働省は「入院患者が追い出される訳ではない。削減される療養病床は介護施設に転換してもらうだ
けで、廃止ではない」などと説明しています。厚生労働省の「廃止でなく転換だ」という強弁は、まるで戦時中の大本営発表の「撤退でなく転戦」「敗戦でなく 終戦」という表現と全く同質です。
私は、言葉を弄(ろう)して国民を欺(あざむ)こうとする、役人の小賢(こざか)しさに腹が立ちます。
次号へ続く