Message from the Directorを更新しました(Jan 1,2025)。
Exploring the History of Medicine, Part 51: Florence, Part 31
2009年3月1日
今回も、引き続き、我が国の周産期医療(ひいては医療制度その物)の崩壊原因の一つである社会保障費削減政策と医師不足について述べます。
昨年9月に、舛添要一厚生労働大臣の私的諮問機関「安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会」が「我が国の医師数は絶対的に不足しており、将来的には医学部の定員を現在の1.5倍程度となる1万2000人に増やす必要がある」と勧告しました。これを受けて、政府はようやく「医師不足」を認め、
2009年度以降の医学部入学者数を過去最大規模の8,486人に増員する事を決定しました。今後10年間で医学部入学定員を2500人増やす、すなわち、毎年250人増やすというのです。現在、毎年3000人規模で医師数が増加していますが、これを3250人に増やすという訳です。しかしながら、たったこの程度の増員規模では、12万人も不足している医師数が世界平均に達するまで、今後30年から40年も医師不足が続く計算になります。つまり、この程度の医師数増加策では「焼け石に水」なのです。
政府の医師数増加政策の問題は、その規模が「焼け石に水」程度の不十分なものである点だけに留まりません。政府は渋々「医師不足」を認めはしたものの、 相変わらず社会保障費予算を毎年2,200億円削減する方針を撤回しようとしないのです。つまり「ヒトは増やすがカネは減らす」政策なのです。
産科等の過酷な勤務体系を改善するには、医師を増やして完全な交替勤務制を実現する必要があります。医師を増員するためには、当然、人件費予算を増額す る必要があります。病院にとって主な収入源は診療報酬です。この診療報酬を大幅に増額する以外に方法はないのです。社会保障費予算を毎年2,200億円削
減するという、たわけた方針を直ちに改め、逆に社会保障費予算を大幅に増やし、12年連続で減額している診療報酬を大幅にアップするという大改革が絶対に 必要です。
麻生総理大臣は、昨年、「医師には非常識な人間が多い」と発言して日本医師会から反発を食いました。しかし、皮肉な見方をすれば、この許し難い麻生発言 も正論かも知れません。なぜなら、「カネは増やさないが、ヒトを増やして安全な医療を行え。患者を死なせたりしたら許さないぞ」、こんな理不尽な要求を突
きつけられても、労働組合も結成せず、文句一つ言わず、我が身と家族を犠牲にしながら、黙々と職責を果たそうとする日本の医師達は、確かに「非常識な」集 団と言えるからです。「世界一」の日本の医療は、過酷な労働と安い報酬にも文句を言わず、使命感と責任感だけを支えに身を粉にして働く「非常識な」医師達
によってかろうじて維持されてきました。しかし、これももう限界です。政府も、国民の皆さんも、医師達の「非常識」に甘えるのはもう止めて頂きたいので す。ヒトを増やして安全な医療を行うにはカネがかかるのです。
次回も、引き続き、社会保障費削減政策と医師不足について述べます。