2009年1月1日
皆様、明けましておめでとうございます。
本年も、折に触れ、この場から情報発信していきます。
今回は、前回に引き続き、周産期医療に関して書きます。
日本の周産期医療は崩壊寸前であり、その本質的な原因は次の2点に集約出来ます。
1.国の社会保障費削減政策 2.増加する医療訴訟
この2点は、また、崩壊寸前の日本医療が直面する問題でもあります。
しかも、最近、NHKを始め様々なテレビや新聞で周産期医療や日本の医療制度その物の崩壊について特集されていますが、この2点をその主因として挙げている番組や記事は私の知る限り一つもありません。
1.国の社会保障費削減政策
2001年に発足した小泉純一郎政権は「聖域無き構造改革」を旗印に掲げ、社会保障分野に矢継ぎ早に切り込みました。まず、医療・年金・介護の給付費の自 然増に対して、2002年度から2006年度にかけての5年間に、約1.1兆円の伸びを抑制しました。さらに、小泉氏は2006年「骨太の方針2006」
を閣議決定し、2007年度以降の5年間においても社会保障費の伸びを1.1兆円(毎年度2,200億円)抑制する方針を示しました。この方針にのっと り、現在もなお社会保障費は削減され続けています。
その一環として、医師の技術料である診療報酬(2年置きに改訂)も6回(12年)連続で引き下げられています。OECD(経済協力開発機構、世界の先進 30ヶ国)の2007年ヘルスデータによると、GDP(国内総生産)に占める医療費の割合が、日本は8.0%(30ヶ国中21位)と平均以下であり、もち
ろんG7(米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本の先進7ヶ国)中、最下位です。トップの米国が15.3%ですから、我が国はその約半分 です。12年連続で引き下げられ続けている医師の技術料(診療報酬)は、悲しい事に米国の約2割しかありません。ほんの一例を挙げると、初診料が日本
2,500円(米国10,000円)、再診料が日本700円(米国10,000円)、帝王切開術が日本150,000円(米国750,000円)、大腸内 視鏡が日本15,500円(米国500,000円)といった具合です。
そもそも、1960年代以降約50年間に渡り、日本は医療費抑制政策を執り続けてきました。この医療費抑制政策が顕著になったのは1983年(昭和58 年)でした。この年、戦後の医師数目標値(人口10万人当たり150人)が達成されると同時に、厚生省は「医療費亡国論」を発表し、「医師過剰時代」を喧
伝し始めたのです。即ち、「これ以上医師が増えるとそれだけ医療費も膨らみ、国家がつぶれてしまう」と吹聴したのです。そして、この年以降、医師数の抑制 を目的に、大学医学部の入学定員を削減し始めたのです。その結果、2003年から2007年まで、大学医学部入学者数は7,625人にまで抑制されまし た。
次回も、引き続き、我が国の周産期医療(ひいては医療制度その物)の崩壊原因の一つである社会保障費削減政策と医師不足について述べます。