2008年11月1日
今回は健康保険について書きます。
平成18年に政府が強行採決した「医療制度改革関連法」によって、本年10月より政府管掌健康保険(政管健保)が廃止され、新しい健康保険(「全国健康保険協会管掌健康保険」、略称:協会けんぽ)が発足しました。政管健保は中小企業の社員及び家族(合計約3600万人)が加入し、国(社会保険庁)が保険者として運営してきた全国一律の健康保険制度です。一方、この10月、悪名高い社会保険庁が解体され、「全国健康保険協会」という組織が新たにその受け皿として設立されました。この新しい組織が社会保険庁から引き継ぐ形で、「協会けんぽ」を運営する事になったのですが、これは単なる看板の掛け替えではなく、政管健保とは全く別の代物なのです。
すなわち、「全国健康保険協会」は47都道府県に支部を設置し、支部単位(都道府県単位)の財政運営を行う事と定められたのです。国は責務を投げ捨て て、都道府県に丸投げしてしまった訳です。当面の間は、「協会けんぽ」の保険料を政管健保の保険料と同じとするものの、1年後には各都道府県ごとに地域の
医療費を反映した保険料を設定して良い事になっています。従って、平成21年10月から、全国一律の保険料は廃止され、都道府県ごとの保険料となります。
各都道府県は単年度の収支が均衡するように保険料を設定して財政運営を行います。
厚生労働省は、都道府県ごとに差違がある医療費をストレートに保険料に反映すると定めています。つまり、医療費が高い県は保険料が高く、医療費が安い県は 保険料が安くなる訳です。現在、最も医療費が高いのは北海道、最も安いのは長野県です。北海道と長野県では、保険料に相当の格差が生じると予想されます。
さらに、平成25年以降には、医療費の高い都道府県は県内の医療機関に支払う診療報酬を減額しても良いという特例措置が設けられる予定です。具体的に言 うと、半年以上入院している高齢者の入院費をカットする等の特例措置によって医療費を削減する事が許されるというのです。これにより、益々、高齢者の病院
からの「追い出し」が加速し、医療難民・介護難民が増加する事になるでしょう。また、同じ医療行為の費用が都道府県によって異なる事態となり、大きな混乱 が予想されます。
以上述べたように、新しい健康保険「協会けんぽ」とは、「社会保険庁解体」の美名を隠れ蓑に、国の責務を投げ捨てると同時に、都道府県単位で保険料値上 げと医療費削減を狙った極悪制度です。しかも、この様な国の魂胆はほとんど報道されず、国民には知らされていません。一人でも多くの方にこの事実を知って
頂き、国が医療費抑制政策をこのまま執り続けて良いのか?医療崩壊が益々進んで良いのか?を考えて頂きたいと思います。そのための判断材料として、今後も 機会あるごとに情報発信していきます。