平成28年7月1日
血液型によって性格を判断しようというバカバカしい考え方が、これほど当たり前のように流布(るふ)している日本は、世界的にも珍しいようです。
ただし、人間を分類しようという試みは古代から行われてきました。
今から2,400年前の紀元前400年頃、古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、人間には4種類の体液があり、その混合に変調が生じると病気になるという「四体液説」を唱えました。
4つの体液とは、血液・黄(色の)胆汁・黒(色の)胆汁・粘液です。
ヒポクラテスはこの4つの体液を、当時(古代ギリシャ)の「四大元素(空気、火、地、水)」に関連付けました。
すなわち、血液が空気、黄胆汁が火、黒胆汁が地、粘液が水に相当すると考えたのです。
それから約500年後の紀元100年代(今から1,900年前)に、古代ギリシャ・ローマにガレノスという医師が現れました。
彼はヒポクラテスの「四体液説」を発展させ、4種類の体液の偏(かたよ)りによって気質が異なるという「四気質説」を提唱しました。
これが、人の性格分類の始まりです。
「四気質説」によると、血液が多い人は「多血質」と呼ばれ、明るく社交的な気質の持ち主です。
血液は古代ギリシャの「四大元素」の中の空気に相当しますので、大気中に上昇して行くイメージです。
黄(色の)胆汁が多い人は「胆汁質」と呼ばれ、積極的で短気な気質の持ち主とされます。
黄(色の)胆汁は「四大元素」の火に相当しますので、カーッと燃え上がるような気質のイメージです。
黒(色の)胆汁が多い人は「黒胆汁質(憂うつ質)」と呼ばれ、心配性(しんぱいしょう)で不安定な気質の持ち主とされます。
黒(色の)胆汁は「四大元素」の地に相当しますので、下方へと向かうような暗く陰湿なイメージです。
そして、粘液が多い人は「粘液質」と呼ばれ、冷静で勤勉な気質の持ち主とされます。
粘液は「四大元素」の水に相当しますので、冷ややかなイメージです。
「四気質説」はヨーロッパの歴史の中で一旦忘れ去られていきましたが、ルネッサンス期以降、再び脚光を浴びる事になりました。
哲学者カントは、「四気質説」に基づいて人間の気質について論じました。
心理学者ブントの気質理論も「四気質説」に基づくものでした。
その他、多くの学者が「四気質説」を取り上げ、これを基礎として多くの理論が発展していきました。
もちろん、人間の体液がこれら4種類で構成されているという説は、現代医学において完全に否定されます。
しかし、4つの気質として書かれた記述内容を基本として、2,000年以上もの長きに渡って、多くの人々が人間を論じてきたのです。
やがて、この論争に乗じ、20世紀になって唐突(とうとつ)に、一人の日本人が人間の性格と血液型を結びつける珍説(ちんせつ)を発表したのです。
次号で詳しく述べます。
次号へ続く