ステロイドにも注射剤、内服薬(飲み薬)、外用剤(塗り薬)、吸入薬、点鼻薬、点眼薬などの種類があります。
当院で処方するステロイドの大部分は外用剤です。
ステロイド恐怖に陥(おちい)っている人の大半は、次の2つの内のどちらかだと思います。
①注射剤や内服薬の副作用と外用剤の副作用との混同。
②アトピー性皮膚炎そのものの悪化と、ステロイドの副作用との混同。
ステロイドは糖・脂質・蛋白(たんぱく)の代謝、免疫系、水・電解質代謝、骨カルシウム代謝など、生体の多くの機能に関与し、生命維持に必須のホルモンです。
治療薬としてステロイドを用いる際に、目的とする薬理作用は抗炎症作用と免疫抑制作用です。外用剤の目的もこの2つです。
目的とする薬理作用(主作用)以外は全て副作用となります。
ステロイドに対する偏見が急速に広がる切っ掛けの一つになったのが、1990年代前半にニュース番組のキャスターがステロイドを「悪魔の薬」と呼んだ事件でした。
この時以降、医療現場で患者さんがステロイドを拒否する事が多くなったように感じます。
そして、インターネットの普及に伴い、近年、アトピービジネスが隆盛を極(きわ)めています。アトピービジネスとは、アトピー性皮膚炎に代表される皮膚炎患者に対し、ステロイドに対する不安を煽(あお)り、医療保険外の商品や行為によって金(かね)儲(もう)けを企(たくら)む活動の事です。
代表的なアトピービジネスを挙げると、健康食品、温泉療法、海水浴、入浴剤(石鹸(せっけん)、塩、ヨモギ)、化粧品、水(みず)治療(アルカリイオン水、酸性水)など枚挙に暇(いとま)がありません。
試しに、「奇跡の肌△△」というスキンケア商品のウェブサイトを覗(のぞ)いてみましょう。
「恐ろしい」ステロイドを塗るのを止めて、「奇跡の肌△△」を塗り始めたという人の声だそうです。
「ステロイドを使えば一時的に見た目は良くなりますが、使い続けなくてはいけないというデメリットがあります。
ステロイドを使うことによって起こり得る代表的な副作用には、次のようなものがあります。
糖尿病、クッシング症候群、白内障、緑内障、感染症の誘発、皮膚線条、紫斑、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、骨粗鬆(こつそしょう)症、筋力低下、精神症状、ムーンフェイス、月経異常、間質性肺炎、毛細血管拡張、多毛、副腎皮質機能低下など。
特に、私が一番心配した副作用は腎機能の低下です。
つまり、ステロイドが働いてくれると勘違いをして、自分の腎臓が働かなくなったり、一度ステロイドを使用し続けると、どんどん強いステロイドにしていかないと効き目が弱くなっていくということです。
また、皮膚がんの発生率が上がるというリスクや、大人になって麻酔を安心して使えなくなるかもしれないという話を聞いたことも、脱ステロイドを目指す理由のひとつになりました。
実際のところ、私は眼圧が高かったり、毛細血管が少し浮き出ていたりしています。
そして、今でも足裏マッサージに行くと、必ずセラピストの方から『お客さん、腎臓が弱いですね』と言われます。」
全くデタラメだらけの内容です。
次号に続く