医学の歴史を訪ねて 第48回 フィレンツェ編 その28 - hajime-clinic

医学の歴史を訪ねて 第48回 フィレンツェ編 その28

令和6年10月1日

 

ウッフィツィ美術館 

8.ヒュギエイア

  ヒュギエイアについては平成34101日号フィレンツェ編でも触れましたが、もう少し詳しく述べます。

 ヒュギエイア"Hygieia"は、ギリシャ神話に登場する女神です。

医術の祖アポロンの子である医神アスクレピオスの娘の一人です。

つまり、アポロンにとっては孫です。

父アスクレピオス神と同様、蛇を従え、薬や水を入れる杯(さかずき)(または壺(つぼ))を携(たずさ)えています。

(アスクレピオスの蛇に、杯(壺)に入れた餌(えさ)を与えている、という説もあります)

  この蛇と杯をモチーフにした「ヒュギエイアの杯」を、多くの国の薬剤師会がシンボルマークにしています。

アスクレピオスの杖が医学の象徴で、ヒュギエイアの杯は薬学の象徴という訳です。

  アスクレピオス信仰が広がるにつれて、ヒュギエイアに対する信仰も厚くなりました。

ヒュギエイアは女性神であったため、女性の健康を守る神として崇(あが)められるようになりました。

当時の女性の間に、ヒュギエイアの彫像を髪飾りにすることが流行したそうです。

 Hygieiaはギリシャ語の"hygies"(ヒュギエス)(健康な)に由来しており、英語の"hygiene"(ハイジーン)(清潔、衛生、衛生学)の語源でもあります。

ギリシャ神話のヒュギエイアは、ローマ神話ではサルース"Salus"と呼ばれます。

"Salus"が健康の女神ですから、イタリア語では健康を"salute"(サルーテ)といいます。

  「ハイジーン」と聞くと女性用生理用品を思い浮かべる人がいるかも知れません。

本稿を読んだ今日からは、ギリシャ神話の健康の 女神を思い出して下さいね

 以下にヒュギエイア像と種々のロゴマークを示します。

いずれも、「ヒュギエイアの杯」が薬学の象徴です。

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