医学の歴史を訪ねて 第26回 フィレンツェ編 その6 - hajime-clinic

医学の歴史を訪ねて 第26回 フィレンツェ編 その6

慈善救急診療所 Misericordia(ミゼリコルディア)

 キリスト教には、「内面的な信仰(神への愛)」と「外面的な行動(隣人愛)」を実行せよ、という考え方があります。

そして、隣人愛については、具体的な行動として、「慈悲 "Misericordia"(ミゼリコルディア)」を実践せよ、と教えています。

 聖書に記されている「七つの慈悲の業(ぎょう)」とは、

①飢えている者に食事を与える

②喉が渇いている者に水を与える

③旅をしている者に宿を貸す

④裸でいる者に衣服を与える

⑤病人を見舞い世話する

⑥囚人を訪問する

⑦死者を埋葬する

の七つです。

 中世ヨーロッパにキリスト教が広まると、ボランティア団体として数多くの「兄弟会」が生まれました。

その最古参が、13世紀のフィレンツェに創設された「ミゼリコルディア(慈悲の聖母マリア兄弟会)」です。

14世紀には、ミゼリコルディアは他の兄弟会(「オル・サン・ミケーレ」や「ビガッロ」など)と並んで、重要な慈善団体となりました。

 14世紀以降、断続的に起きたペスト大流行の際には、ミゼリコルディアは慈悲の業に献身しました。

そして、病人の介護にあたった信者の多くがペストの犠牲になりました。

  16世紀には、メディチ家のトスカーナ大公フランチェスコ・デ・メディチの意向により、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の前の広場(フィレンツェの一等地)に面した建物を与えられました。

  二度に亘る世界大戦では、負傷兵や病人を搬送し、救急医療を提供しました。

 現代でも、ミゼリコルディアは、キリスト教精神に基づいて医療・奉仕活動を続けています。

病人や貧民を救うだけでなく、処刑前の囚人に慰めを与えたり、貧しい子女の結婚費用を援助するなどの活動も行っているそうです。

大聖堂広場に面した本部の前には、ミゼリコルディアの救急車とスタッフが常時待機しています。

看板には「永遠に奉仕する」と書いてあります。

 

  私も「慈悲」の心を発揮して、ささやかな寄付(10ユーロ、当時のレートで約1,300円)をしました。

フィレンツェではなく、藤沢市辻堂で、永遠に奉仕します。

トップに戻る パソコン版で表示